第22話 雪景色に魅せられて

 雪は、降って当たり前。


 北海道で生まれ育った私は、そういう感覚で育ちました。


 冬になると、街が白くて美しい雪景色に変わります。


 心が華やぎ、ウキウキと楽しくなります。


 雪かきはしんどかったですけどね(笑)。


 関東地方に住むようになってから〇〇年が経ち、ようやく雪が無い物足りなさに慣れました。


 今は、雪があまり降らない場所で過ごす冬も、好きになりましたね。


 どちらにも良いところがあり、それを楽しむことが出来ちゃいます。


 冬の過ごし方というのは雪の有り無しによって、だいぶ異なるものなのですね。


 雪道は凍りやすいですし、そのまま歩いても滑って転ぶ事があるので注意が必要です。


 でも雪が無ければ安心して歩けます。靴もスパイクつきのものじゃ無くて、普通のものを履けますしね。


 毎日せっせと雪かきをしなくて済むし、それだけでも体への負担が減るのでいいなと感じます。


 雪の無い地域では、たまに雪が降ると電車が止まってしまい、大勢の方々が大変な思いをしなければならないのには、驚きましたけれど。


 時々、小さな頃に過ごした冬の思い出が、心の中で甦る事があります。


 しんしんと降り積もる雪を、窓からただただじ〜っと観察しておりましたね。


 耳がつんとするような静けさを感じながら雪を見るのが、たまらなく楽しかったです。


 あの光景ってどういうわけか、ずーっと見続けていると、雪が下に降っているはずなのに、自分の方がどんどん上にあがっているような気持になるんです。


 何だか、ものすごく不思議な感覚になります。


 じーっと、雪だけを見続ける必要があるんですけれども。


 その気持ちが面白かったので、身近な人に説明したことがあるんですけど、だーれも共感してくれませんでした。


 母も兄も、首を傾げておりました。


「うーん、その気持ち…………わからないなぁ」


 みたいな感じで。


 えー。


 二人には、わからないのかぁ。


 残念だなぁ。


 どなたか、わかって下さる方いらっしゃいますか???


 誰かとこの不思議な感覚を、共有してみたいのですけれどね。



 実家の近所に当時、だだっ広い空き地がありました。


 こんもりと雪が積もったその空き地で、友達とそり遊びをしたり、雪合戦をしたしもしました。


 ちょっと遠くを見ると、ぽつんと可愛い感じの、小さな煉瓦造りの建物があったんですよ。


 冬になるとその場所が一面雪に覆われて、空を見上げるとオリオン座が冬の夜空に輝いていて、一枚の絵画のように神秘的で、可愛らしく見えました。


 小さな頃から目に焼きついていたその景色は、童話のワンシーンに入り込んだ感覚で、大好きでした。


 今は、故郷から遠く離れた毎日を送っておりますので、ふとした瞬間にその雪景色を思い出し、時々涙が溢れ出そうになります。


 ちょっとセンチメンタルになっちゃいましたね。


 雪にまつわる思い出話を、させていただきましょうかね。



 7歳くらいだった頃の、冬のある日の出来事です。


 フンワリした新雪がこんもりと高〜く、家の庭に降り積もっていたのです。


 ふいにやってみたくなって、スキーウェアに着替えて2階から何度か「ズボッ!!」って、雪の中に飛び降りたんですよね。


 めっちゃ楽しかったです。


 空飛んでる気分で。


 もーちょっとやりたい!


 やりたいやりたい!!


 って心踊ったのです。が……


 その音を聞いた母が「何やってんのー!!」と。


 それまで一度も見たことの無い驚愕の表情を浮かべながら、大声で私を諌めました。


 とても心配をかけてしまったようです。


 お母さん、ごめんなさい。


 もうしませーん!




 中学生の頃には、こんな出来事もありました。


 融けた雪が凍って固まった、広い道路の横断歩道のど真ん中を、急いでいたので速足で歩いた瞬間。


 ツルツルになっていた路面に足を滑らせ、勢いよくすっ転んでしまい、路面に後頭部を『ガーーーン!!!』と打ちつけてしまったのです。


 生まれて初めて、目の前を火花が舞い散りました。


 とても恥ずかしくて生きた心地がしませんでしたし、しばらく後頭部のたんこぶはズキズキ痛みましたし。


 広い横断歩道でしたので、車の中からたくさんのドライバーの方が、「ああ、あの中学生、すっごい勢いで転んだな。バカだなぁ。ドジだなぁ。可哀想だなぁ。ありゃタンコブになるぜ、絶対」とか思ったかも知れません(笑)。


 一生忘れられない、恥ずかしい思い出ですね(笑)!


 色々思い出せば出すほどに……


 私って今、北海道に住んで無くて良かったかも知れない……と思いました。


 ドジなのは相変わらずなので、きっと何年かに一回は派手に転んで、骨折とかしてしまいそうな気がします。


 人に迷惑かけるのは嫌だしなぁ…


 とにかく、どこにいてもしっかりしないといけませんね。


 あの雪景色を、またこの目で見たいものです。

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