(二)-16

 その直後、道路の向こうから車が近づいてくる音がした。シルバーのバンだった。そのバンは、白いバンにまっすぐ向かっていき、正面からぶつかった。車が大きく揺れ、外にいた隊員は思わず身をかがめた。

 その隙に賊たちはシルバーのバンに乗り込んだ。そしてすぐに車を急速にバックさせて、離れていった。隊員は車めがけて短発で発砲した。バンに命中し、右側の前照灯が消えた。

 急速に後退する銀色のバンは一つ先の十字路を抜けたところで停止し、ギアを切り替えて前進し、すぐに右方向に曲がって走り去っていった。

 ティムは、賊が立ち去ったのを確認すると、隊員を一人連れて酒田の部屋に入った。幼さを残す顔立ちの若者が、部屋の隅でおびえていた。

 ティムは窓際のデスクにあるSDカードを見つけた。そして「コインロッカーにあったのはそのSDカードか」と尋ねようとしたところで玄関の方から野太い日本語で「警察だ!」と声がした。

 玄関にウインドブレーカーを着た男性が立っていた。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る