”無手”決勝~竜頭蛇尾~
「「「うおおおおおおおおおおお!!???」」」
俺とポンチャイの試合から熱気が、熱狂が、歓声が鳴りやまない会場が待ちきれない様子だった。
「「「タイチ! タイチ! タイチ!」」」
「呼ばれているな、タイチよ。お前の名前は、明日には全世界に轟くだろうな」
「”一番弟子”として、嬉しい限りヨ」
「ヨシコさんは、お強いです! ”無手”で戦うと、私の
「タイチ
仲間達も口々に決勝での俺の活躍を期待している。
「悪いが、決勝は。…………
ーーーーーー
「完敗でしたね~。ご自慢の”影”を真っ向から破られるとは~」
「ヨシコか。言い訳も弁解もしない。タイチが、……タイチ
敗れたポンチャイが、決勝でのタイチの相手になるヨシコに話しかけられていた。
「それは
「そういう訳では無い。だが、タイチ様に
「密着する距離。フェイ・ラン殿に【
「フェイ・ランの【寸勁】は進歩していた。タイチの【武道】が、その一端だろう。
一種の仲間意識なのだろう。
ポンチャイはヨシコに対し、注意と警戒、タイチに
「攻防一体の、わたくしの戦法では敗れるでしょう」
武芸者としての
「ですが! それは
___る程、ヨシノ・ヨシコは可憐で、
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
司会者に入場を促される前に、タイチとヨシコが舞台で佇んでいた。
__『”
__『”無手”・決勝!!』
__『
ーーーーーー
「「「わあああああああああああああああああ!!!」」」
会場が沸き立つが出場者達、武芸に秀でた者達からは奇妙な光景が映っていた。
「「「わあああああああああああああああああ!!!」」」
適切に防御をしているものの、触れられるだけで危険なヨシコの【消力】を込められた攻撃を、わざと数回、タイチが喰らってみたように見えたからだ。
「「「わあああああああああああああああああ!!!」」」
存分に触り、効果が充分であると判断したヨシコが一転、”攻め”を捨てた”回避”。
殴らせも、掴ませも、
__【空手】
__【カポエイラ】
__【中国拳法】
__【太極拳】
__【蛇形拳】
予選と本選でタイチが使って見せた、タイチから吸収したフェイ・ランなどが見せた、相手を掴む必要のある【柔道】を除いた全ての【武道】を使っていた。
「わたくしで! わたくしで、おさらいをさせるなど!! なんたる侮辱でしてーー!!!」
女性であっても武芸者であるヨシコが、自分を
この距離間ではコレ、躱されたらコレ、【武道】それぞれの”
”ドスン”!!!!!
ヨシコの怒りの問いかけに答えるように、天高く上げられたタイチの脚が大地を踏みしめる音が鳴り響く!!!
ーーーーーー
「侮辱などしていない。おさらいを、させたかったのは事実だが。全て本気で、倒すつもりで【武道】は使った。俺の【武道】では、
タイチが最初に、
__”一つ”は、ヨシコに”攻め”を考えずに”回避”に徹しさせるため。
ニーナが模倣した【消力】から
「それに”無手”で勝つためには、____”回避”に全力になってもらう必要が有ったからな!!!」
__”二つ”は当然____勝利の為にだ!!!!!
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「「「わあああ……あぁ……____!???」」」
武芸に精通していない観客ですら、タイチ達の試合の異変に気付いていた。
今まで様々な【武道】を繰り返し見せていたタイチからの攻撃が一切、無くなったのだ。
「ほ~、ほほ~~……。ぐぬぬ、でして~」
自身の【
今まで、気付いたら相手が【消力】で動けなくなる、負ける、
タイチが使っている【武道】は____【相撲】。
今は【太極拳】も【相撲】もヨシコには、ある程度の理解が出来る。
タイチの【相撲】から発せられる”圧”で、自身が自動的に後退させられていることに気付いたのだ。
「お、おい」「このままだと……」「マジか」
今、ヨシコは触られることさえも警戒し、”回避”に全ての【
それゆえに、タイチから発せられる”圧”に、過敏になった”回避”が
厳格に、【相撲】や【ボクシング】のように厳格に、試合場の広さが明確な【武道】には、
”フェイント”などという技術は、単に相手を
そして、真に素晴らしい”フェイント”は反応しなければ____そのまま攻撃として使えるモノ!!!
もし、ヨシコが【武道】を、【太極拳】を極めていたとしても、【消力】がタイチを削りきるまで時間が掛かる以上、
白虎の”適性”に乏しく、”無手”においてタイチと真っ向から打ち合えない時点で____結果は変わらないのだ!!
「く、悔しいの、でして~~~~」
自身に適した【太極拳】を習得していないヨシコが、【
タイチの頭上で輝く”球体”が闇に飲まれたように、完全に光を失っていた。
「全快、とまで往かないな。やはり、オリジナルは威力が違う。【
__『……はっ!!? じ、場外! 勝者! コレエダ・タイチ!』
今までの派手で、盛り上がる内容ではない結果に、会場は水を打ったように静まり返っていた。
途中は近年でも、長い歴史の中でも、稀に見る盛り上がりを見せていた”無手”の試合の全行程が、静かに終わりを告げる。
本年度”無手”王者は____コレエダ・タイチ!!!
長く、”竜頭蛇尾”な内容だったと語り継がれる”無手”の大会が終わったのだ。
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