第17話 手を止めないでいると
私は、執務室で仕事をしていた。
いつもなら、そろそろ休憩の時間だ。
だが、リンドラ様の合図がないからか、手を止める気にはならなかった。
という訳で、私は仕事を進めている。一人だからか、そのように判断したのだ。
「失礼します」
「え?」
そんな風に手を動かしていると、執務室の戸が叩かれた。
この執務室に、誰かが来ることは珍しいことではない。だが、リンドラ様がいない今、誰かが何かを知らせに来るのは少しおかしい気もする。
「どうぞ、開いています」
「失礼します」
私が許可すると、執務室の戸が開いた。
その直後、見知ったメイドさんが部屋の中に入ってくる。
「ラルリアさん、どうかしましたか?」
部屋に入ってきたのは、ラルリアさんだった。
ラルリアさんは、私についてくれているメイドさんの一人だ。身の周りのお世話など、いつも頼らせてもらっている。
そんな彼女は、私が執務している時は別の仕事をしているはずだ。その関係で、何か伝えに来たのだろうか。
「はい、サフィナ様の様子を見に来たのです」
「え? 私の様子を?」
そう思った私だったが、ラルリアさんはそのようなことを言ってきた。
どうやら、私の様子を見に来たらしいのだ。
「リンドラ様から、そのように言われたのです。サフィナ様は、自分がいなければ手を止めないかもしれないから、見に行って欲しいと」
「えっ……?」
「どうやら、リンドラ様の予想通りだったようですが……」
「あ、えっと……」
ラルリアさんの言葉を聞いて、私は動揺した。
まさか、リンドラ様にそこまで読まれているとは驚きだ。
「リンドラ様から、もし休んでいなければ、伝えて欲しい言葉があると言われています。今から、それを言いますが、よろしいでしょうか?」
「あ、はい……」
「手を止めず働き続けるのは、悪いことではありません。ですが、休むことも大切なことです。無理をしすぎて後に響くことは、避けるべきことです」
ラルリアさんを通して、リンドラ様の言葉がかけられた。
確かに、休むことも大切なことだ。無理をして働き続けるのは、逆に良くない結果をもたらすことになるだろう。
「リンドラ様は、本当に私のことをわかっているのですね」
「そうですね。さて、サフィナ様、休憩にしましょうか? 先程の言葉を聞いて、まだ働こうと思うのなら、話は別ですが……」
「い、いえ、休憩にしたいと思います」
先程の言葉を受けて、まだ働こうなどと思える訳はなかった。
こうして、私はしばらく休憩することを決めるのだった。
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