勘違いしてしまった女
リサは本当に
ほとんど毎日のように絶望していた。
その度に僕は部屋にお邪魔して、
彼女の絶望をご馳走になる。
リサは僕が現れると
いつも泣きじゃくりながら愚痴をこぼす。
彼氏に殴られて
鼻の骨が折れたとか、
彼氏の借金返済の為に
無理矢理風俗で働かされて、
好きでもない男に抱かれるのが辛いとか、
自分は体を売ってまで
彼氏に献身しているのに、
当の本人は他の女と遊びまくっていて
気が狂いそうだとか……。
人間の男と女にはよくあること。
よくある普通の絶望だ。
僕が何度も何度も
彼女の絶望を喰らいに
姿を現すものだから、
今ではもうすっかり
予定調和みたいになってしまっている。
本当はこういうお約束をぶち破ってこその
カオスな悪魔なんだけどね……
こういう適齢期の女が生み出す絶望は
あと引きでついつい癖になってしまうものさ。
心ゆくまで何度でも堪能したい、
そんな気にもなってしまう。
さっきまで泣きながら
愚痴をこぼしていたリサが、
今はもう晴れ晴れとした顔をしている。
「あなたに話を聞いてもらえると、
なんだか気分が落ち着くわ……
とってもスッキリした気持ちになるの」
それは僕が、絶望をはじめとする
君のネガティブな感情を
すべて喰らい尽くしているからなんだけどね。
僕が君の絶望を喰らい尽くす頃には、
君にはもうポジティブな感情しか
残っていないんだよ……。
–
そんな関係をしばらく続けていたら、
ある日リサがとんでもないことを言い出した。
ちょっとポジティブになり過ぎたのか、
やはりリサには男を見る目が無かった、
そういうことなのか……。
「あんな男とはもう別れるわ」
「……ベルゼ、
私はあなたのことが好きになったの……」
「あなたは、私が絶望の淵に居る時
いつも優しく、そばで寄り添っていてくれたわ」
そりゃ、まぁ、僕は
君の絶望を喰らいに来ている訳だから
僕が現れる時、
君はいつも絶望しているだろうね。
「ベルゼ、お願いよ
私とここでずっと一緒に暮らしましょう?」
「あなたが一緒に居てくれたら、
私はそれだけで幸せよ」
うーん……
リサは彼氏に振り回されて、
いつも絶望していた訳だから
その彼氏と別れてしまったら
もう絶望しないということになるのかな?
そして、彼女が僕と一緒に居たら
幸福になれると言うのなら
それは彼女がもう絶望しないということになる
……それはちょっと困る
「リサ、君が彼氏と別れると言うのなら、
僕は君とはもう一緒に居られない」
「これで、お別れだ……」
「そ、そんな……
待って、行かないで、ベルゼ……」
ん? あれ?
なんだろう?
リサが絶望している
まぁ、とりあえずいつものように
絶望をいただいておきますか……
……あぁ、美味、美味
…………。
あぁ、そうか、彼女は
僕に振られたから絶望したのか。
……ということは。
「ねえ、リサ、
僕にずっと振られ続けて、
ずっと絶望し続けなよ?」
「そうすれば一緒に居ることが出来るよ」
「あなた、本当に悪魔みたいな人ね」
そりゃぁ、僕、本当の悪魔だからね
「この、悪魔っ!」
いやいや、まったく仰せの通り
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