第29話 ショッピング
夏休みに入って三日。
今日は朝から一円玉天気。天気予報によれば、今日一日は天気は崩れることはないみたいだ。
気温も30度を超え、燦々と輝く太陽がジリジリと肌を焼く。外で遊ぶにはもってこいの天気だろう。今目の前を通り過ぎた小学生も、朝から虫取り網を持って元気に走っている。
「暑いねぇ。頭が茹だっちゃいそう」
「今日は今年一番の暑さだってさ。今朝のニュースでやってた」
「あ〜、どうりで〜」
暑さからか、いつも以上にぽわぽわしている咲良。若干頬が赤いのも気のせいじゃないだろう。
純白のワンピースに、日焼け対策のためのピンク色のカーディガンを羽織っている。この暑さでも長袖を着なきゃならないって、女の子は大変だな。
小さい肩掛けバッグを斜めに掛けることで、見事なパイスラを作っている。文字にするなら『〇/〇』。『%』では丸が小さすぎる。それほどの破壊力だ。ヤバす。
それを横目で見ていると、遠くから羽瀬さんと峰さんが走って来たのが見えた。
「よっすよっすー! おまたー!」
「……3日間引きこもってエロゲしてたから陽射しがきつい……」
お、おぉ……なんつーか……目のやり場に困る格好だ……。
羽瀬さんは普通の白ティーだが、シャツの前をリボンのように結んでいて例の腹筋やヘソを丸出しにしている。そのせいで咲良並のおっぱいがとてもおっぱい。更に肩に切れ込みが入っていて全体的に露出度が高い。プラスして下はスパッツのようなハーパン。うんヤバい。
峰さんは黄色いタンクトップにブルーのホットパンツ。羽瀬さんほど露出は抑えられているが、タンクトップが体の大きさに合ってないからかガッツリと見せブラしている。インドア趣味の峰さんらしく、真っ白で綺麗な肌だ。
「…………っ」
でもね……あの、ボク男の子なんだけど。目の毒というか精神衛生上宜しくないというか……とにかくエロい。エロすぎる。
そんな二人に釘付けになっていると、咲良が俺の前に割り込んできて、手で大きくバツを作った。
「み、見ちゃダメっ。ダメですっ……!」
「み、見てない見てない……!」
「……ほんと……?」
「…………」
「何か言って!?」
ごめん、嘘です。がっつり目に焼き付けました。だってしょうがないじゃん? 男のサガですよ、ええ。
「あれ? 時田っち、前にウチのスポブラとスパッツ姿見て……あ」
遅い! 手で口を塞いでももう遅い! がっつり殆ど言っちゃってるから!
「……雪和くん……?」
「い、いや違うんだ咲良。これには水溜まりのように浅く狭い理由が……」
「正座」
「……え?」
今なんと?
難聴主人公よろしく首を傾げると。
「せ、い、ざ」
ワォ、めっちゃ(怖)いい笑顔☆
「……はい」
そこから数寄屋が来るまでの十分間。俺は公共の場で女の子の前で正座していましたとさ。
くっ脚の痺れが止まらねーぜ……。
「ああ、僕なら十分前に来たけど、何か面白そうなことになってたから暫く遠くで見させてもらったよ」
確信犯か。
◆◆◆
全員が揃ったところで、俺達は目的の水着屋へとやって来ていた。
と言っても、俺と数寄屋は無難なサーフパンツを買っただけ。色は俺が紺、数寄屋が水色。超無難だ。
俺と数寄屋は十分ぐらいで終わったが……問題は女子ーズ。長い、本当に長い。かれこれ一時間は経ってる。
「り、り……リッツマンシュタット」
「とー、とー……トゥングー王朝」
「うか……ウィンストンセーレム」
「むって……ユキカズ、中々いやらしい回しをするじゃないか。ムナジロゴジュウカラ」
「お前も、らで返すじゃないか。ライブラリルーティン。……あっ」
「はい、じゃあジュースはユキカズの奢りね」
「畜生……ライブラリプログラムと間違えた……」
近くの自販機で買ったジュース代を数寄屋に渡すと、ようやく店から3人が並んで出てきた。
「2人とも、待たせてごめんね」
「いいや、待ってないよ。いいものは買えたのか?」
「うん! 来週の海、楽しみにしててね!」
ふむ……どんな水着なんだろう。
ワンピースタイプかな。それともビキニタイプか……どちらにせよ咲良なら絶対似合う。間違いない。
「ぶぅ……咲良ちんならマイクロビキニが絶対似合うのに……」
「マイクロビキニ……だと……!?」
「ちちちちち違うよ!? ぜんっぜん違うからね!? 買ったのは普通の、普通の水着だから! な、夏海ちゃんっ、変なこと言わないで!」
いや、でもマイクロビキニの咲良か……。
イメージしろ、イメージするんだ。布面積の少ないマイクロビキニ咲良が、俺に向けて投げキッスをするところを……。
ぽわんぽんわんぽわ〜ん。
「……素晴らしいな」
「でしょ!?」
「雪和くん、夏海ちゃん! 悪ふざけしないで!」
いや、至極真面目なんですが。
…………。
「あ、いや。やっぱりダメだ」
「えー。何でぇ〜?」
「俺以外の前でそんな格好をするなんて許さん」
思えば海もプールも不特定多数の人がいる。そんな所であられもない姿の咲良を晒すなんて、オリュンポス十二神が許しても俺が許さん。ダメ、断じてダメ。
「ヒューッ。言うねぇ時田っち! それでこそ男だ!」
「咲良ちん愛されてる〜!」
「あうぅ……」
2人に茶化されて顔を真っ赤にする咲良。やべ、俺も言い過ぎたか……?
頭をポリポリと掻いてると、数寄屋が小声で話しかけて来た。てかそのニヤニヤ顔止めろ、腹立つ。
「ユキカズって、変なところで男を見せるよね。普段ヘタレなのに」
「ヘタレ言うな」
「くっくっく。さあ、この調子でサクラさんをもっと意識させるんだよ」
「ああ、分かってるさ」
これも全て、咲良を意識させる為の作戦だ。抜かりはない。
さあ、これからが本番だ。
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