ケース3: 結婚
1. クリス伝説SPECIAL
サーニャ達の領を救ってから二週間が経過していた。
クリスは、ゴロゴロと部屋で過ごす生活を繰り返していた。
……何故か?
それでは、現在のクリスの状況をご覧いただこう
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カチッ
「あー……」
俺は日がな一日ゴロゴロしていた。ドラゴンの攻撃でも死ねず、毒でも死ねず、何となく八方ふさがり感が強くなったのがいけないのだろう。
それと……
俺が色々考えていると、トントンと部屋のドアがノックされた。
「開いてるぞー」
「ただいま学校から戻りましたわ、クリスお兄様。クロミアさん、またわたくしを乗せて飛んでくれませんか! 報酬はこれで……」
するとピクッと耳を動かし、ベッドの上でぐでっとなっていたクロミアが目を覚ます。
「アモルか! もちろんじゃ、わらわも退屈しておったからな! 早速行くのじゃ!」
「お兄様はどうなさいますか?」
「俺はまだ元気が無い……」
「そうですか……また今日も一緒に寝ましょうね!」
嫌な事を言いながら、クロミアと共に部屋を出て行った。
そう、さっきの『それと……』に続く事がまずこれ。
クロミアがちょくちょく遊びに来るようになった。
イスマットで飯を食った後『好きにしろ』と言った意味を間違えて捉えたらしく、好きに遊びに来ていいという解釈をしたようだった。
最低でも週一でバッサバッサと飛んできては家に侵入してくるのだ。
たまに俺の部屋に寝泊りするので、アモルとは仲が悪くなるだろうと思ったが……妹はしたたかだった。
クロミアが一緒に寝るなら自分もいいでしょ? と合法的(?)に潜りこんでくるようになったのだ。
それで仲良くなり、今ではドラゴン形態のクロミアに乗って散歩をするのが趣味と化している……。
そうなるとドラゴンがよくやってくる屋敷という事で噂になり、町を歩くと『ドラゴンナイト』だと騒がれる始末……。恥ずかしくて町を歩けず、引きこもっているという訳だ。
幸いなのはオルコスが出てこないことか。あの日以来またしばらく出てきていない。
「ロクでも無いことを考えてなければいいが……」
俺だって無理に死にたいわけじゃない、あの馬鹿が居なくなれば平和に……過ごせるんだろうか?
しかし、あまり引きこもっていても体に悪い。クロミア達が居ない今なら散歩もしやすいだろう。
キングとオーク達がどうなっているかも気になるしな……。
俺は念の為、眼鏡をかけて外出する事にした。
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「平和だな……」
ついこの前、サーニャ達とバタバタしていたのが懐かしいくらいだ。
ポルタさんもあの事件以来さらに元気になり、商売に精を出す毎日だとか。ウェイクに聞いた。
女は怖い、俺はそんな事を思いつつ公園でボーっとしていると、子連れのお母さん達が多いなと眺めていた。
「あああーん!!」
その内赤ちゃんが泣き始め、お母さんがあやすが泣き止まず、ミルクをあげても泣き止む気配が無かった。
「あらあら……おしめかしら……」
それじゃあ、と帰っていくお母さん。
「そういや、向こうの世界じゃオムツが主流だから、世の母親は便利だったろうな……」
俺は結婚する事を考えていないからそこに気づかなかったな。子供が出来て、俺が死んだら妻も子供も可哀想だ。だったら俺は一人のままでいい。
「でもオムツは流石に難しい……」
子供のために作るのは吝かではないが、ポリマーだっけ? あれが良く分からんのだよなあ。
「とりあえず森へ行くか」
ゴブリンとオークの様子を見に森へと向かう。
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「これはクリス殿、森へ来るのは珍しい。どうされました?」
森の入り口付近で警備をしているゴブリンに遭遇し、声をかけられる。この森……山は俺の所有物なので、こうして何事も無いように警備をお願いしている。
採取はギルドで許可証を持ってくれば入ってもいいことにしているし、無茶な量、それこそゴブリンたちが困らなければガミガミ言う事はない。キングを窓口に紹介した時は驚かれた……のは一瞬で「ああ、クリス様の知り合いなら」とあっさり受け入れられたのが何か悔しい。
「オーク達はどうだ?」
「ああ、様子見でしたか。彼らはとても落ち着いているので、争いも無くうまくやっていますよ。正直、若いやつらにも見習わせたいくらいです。あ、私、今度子供ができるんですよ、是非名付け親になってください!」
ははは、と最初俺の首を撥ねようとしたゴブリンが笑う。カタコトだった言葉もずいぶんうまくなったな、お前……。
「なら良かった、ちょっと顔見せてくる。またな」
手を振って別れ、オークの集落へ向かうと、グレイス山の時と違いかなり立派な家を建造していた。ゴブリンは穴倉だというのに……。
「おや! クリス様! どうしたんですか今日は」
集落の入り口で立ち尽くしていると、村長の息子であるニックが話しかけてきた。手には鍬を持ち、首にはタオル。完全に畑仕事スタイルだな。
「いや、ちょっと顔見せにな。どうだ、ここの生活は?」
「問題が無さ過ぎて怖いくらいですよ、ゴブリン達も良くしてくれますし、キノコや薬草も豊富で、魔物も居るから肉も皆で分けられる……何より土がいいですね。これ、畑で採れたピーマンです、持っていってください」
「お、いいな。野菜炒め作ってもらうか……」
「ほう、それは何ですか? 私達もクリス殿の知恵にあやかりたいものです。あ、そうそう今度子供が出来るんですよ、是非名付け親になってください! お願いします!」
「お、おう……」
ピーマンの入った籠を持って集落を後にする俺。
「むう、どういつもこいつも出産ラッシュ……これは何かの陰謀か? 何て、誰が画策するんだって話だよなー。まあ相手の居ない俺には関係の無い話……さて、次の死地を探すかぁー」
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<あの世>
<ところがどっこい聞いてるのが私、そして画策者、オルコス>
<一応、『アンタ』が干渉しなければ生涯全うしてくれそうじゃない。子供を見る目が妙に優しかったわ。意地張らないでドラゴンの子かサーニャってのと結婚すればいいのに……。で、オルコスは干渉、もう止めといたら? オムツ開発したらまたポイント入るんでしょ>
<そんなチンケなポイントでどうするんですか。もっとドサっと……そうですね、乗り物系はポイント高かった気がします。あなたの担当している方はどこでしたっけ?>
<ちょっと苛酷な環境なんだよね、近くに火山があるし>
ピコーン(電球)
<ほう、どうやって二人を引き合わせるか悩んでいましたがこれはいいかもしれませんね>
<?>
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所有の山にゴブリンとオークを住まわせ、環境維持ができている事を確認したクリス。
結婚出産ラッシュを目の当たりにして、考える。
そして、オルコスの計画が発動する。
次回『気持ち悪いオルコス』
ご期待ください。
※次回予告の内容とサブタイトルは変更になる可能性があります。予めご了承ください。
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