10. 移住計画
サッズに斧が振り降ろされようとしたその時、上空からクリスが降ってきた!
クロミアの背から飛び降り、リーダー格のワーボアに容赦ない蹴りが突き刺さる!
ではその雄姿をご覧いただこう!
「待てお前等ーーー!」
「ド、ドコカラカコエガ!?」
俺は丈夫な体という体質を利用してクロミアの背中から飛び降りた。
着地に失敗しようが頭を打とうが死ぬことは無いからだ。
それもどうかと思うが、すぐ助けに行くにはこれしかないと実行に移した。
そして、上からの攻撃に気付いていない!
バキャ!!
「ギャ!? ……ウ……」
上から見てモヒカンヘルメットが見えたので、どんな奴らか分からないがきっとリーダー格であろうと推測し、そいつ目がけて蹴りをおみまいしてやった! すると鈍い音と共にヘルメットがひしゃげた。
「大丈夫かサッズ!」
案の定ピンピンしている俺は落ちていた角材を使ってサッズを拘束していたヤツらを追い払う。
「あ、ああ……アンタか……助かったよ……」
「クリス殿!? どうしてここに!」
「山頂から火の手が上がっているのが見えたから慌ててきたんだ。あいつらは?」
モヒカンヘルメットの奴を取り囲んで何やら騒いでいる。顔は……オークに似ているけど……。
「彼らはワーボアという、猪人間です。我々とルールは同じですが、争いを好み略奪なども平気で行う残虐な奴等なんです。今もこの村を占拠しようと襲ってきました……」
火の手は上がっているが幸い犠牲者は居ないらしいので、後はあいつらを追い払えばいいってことだな。
そうこうしているとクロミアとサーニャが遅れてやってきた。
「どうじゃ?」
「みなさん大丈夫ですか!」
「おお、サーニャ殿まで! ありがたい事です。してそちらのお方は?」
「わらわか? ブラックドラゴンのクロミアじゃ。最近山頂に越してきた、宜しく頼むぞ!」
クロミアが自己紹介すると、オーク達は一斉にひざまずいた。
「ま、まさかドラゴン様までいらっしゃるとは……村長に代わりお礼申し上げます」
「構わぬ、クリス達が世話になったみたいじゃしな。で、あやつらか……」
それにしてもワーボア達はどうしたと言うのだ? リーダーっぽいやつも起きてこないし。
俺なら危険は無いので近づいてみると……
「オ、オイドウスルンダヨ!? リーダーガシンジマッタゾ!?」
「オレニイウナヨ……ア、ソウダ! キョウカラオレガニューリーダーダ!」
「ナニヲ!? オマエガナレルンナラ、オレニダッテデキルゾ!」
死んだ!? え、マジで!?
そっとリーダー格に近づいてみると、確かに……兜がひしゃげているが、兜がひしゃげたということはその中にある頭もひしゃげたという訳で……。
「グロイ!? そしてすまん! 殺すつもりは無かったんだ!」
良く考えればあの高さから落ちたら重力に引かれてとんでもない重さになる。結果はこのザマだよ!
「だいたい殺人犯はそう言うのじゃ。まあでも自業自得じゃから大丈夫じゃ」
クロミアが嫌な事を言う。でも庇ってくれた。
そしてぎゃーぎゃー騒いでいるワーボアに威嚇するクロミアであった。
「おい、お主ら」
「アーナンダネエチャン? マダリーダーガキマッテ……ド、ドラゴン!?」
尻尾で分かるのか、一目でドラゴンと見極めたこいつらは凄い。
リーダー格以外で村に居たワーボアは7人だが、全員冷や汗を流して立ち尽くしていた。
「オークの村に迷惑をかけているそうじゃのう? どうしてそんなことをするのじゃ?」
「オ、オレタチハソイツニソソノカサレテ……」
「ムラヲキョテンニシテ、ニンゲンノマチモテニイレルト……」
「マジか……お前等が何人いるか分からんが人間は怖いぞ? 近くの町でも数百人単位で暮らしているし
自警団も居る。冒険者だっているんだ、お前等なんて格好の獲物だ。美味しそうだし」
何故かボタン鍋を食べたくなる風貌をしている。
「マ、マジカ!? コリャコイツニダマサレタナ……」
「ダナ……」
「それでどうするのじゃ?」
「ア、アア……モウテハダサネェヨ……ス、スマナカッタ!」
ニューリーダーと最初に名乗った男が土下座してオーク達に謝っていた。ゴブリンといい、物分りはいいなホント……。
「まあ、幸い犠牲はありませんし、今後こういう事が無ければそれで」
ニックが笑いながらワーボア達を許した。
「シカシ、コノヤマハアマリエモノガナクテコマッテイル……」
「確かに……我々オークも木の実やキノコはあっても肉を獲るのが難しいですしね。魚もそんなに採れないですし……」
「そうなのか? ウチの領にある山にはゴブリンが居るんだが食べる量より増える方が多いらしくて困ってたぞ?」
「ほう、それはいいところですね……」
ニックが羨ましそうに言うので、俺は一つ提案した。
「んー、ならオーク達はウチの山に来るか? お前等ならゴブリンと上手くやっていけると思う。OKなら手紙を書いてやるけど……」
「よ、よろしいので?」
「あの山はウチ、というかゴブリンを大人しくさせたとかで俺の持ち物になってるんだよ。ゴブリンもそれなりに数は居るけど、環境整備するには広すぎるんだよな……」
魔物などは冒険者の依頼で駆除されているが、鹿や熊などの動物もかなり多いらしい。人里に来ないよう注視してもらっているが漏れるときは漏れるのだ。そこを強化する意味でもオーク達が移住してくれるのはありがたかったりする。
「是非お願いします! クリス殿であれば信用できますし」
「分かったそれじゃよろしく頼むよ」
キング宛の手紙を書いて渡し、いつ行ってもいいと告げた。
このオーク村は出て行った後、ワーボア達の住処になるらしい。
「アリガトウ、アリガトウ!」
聞けば原始的な生活を行っているそうで、オーク達の生活は羨ましかったそうな。
旅立つ前に色々なノウハウを教えてやるとニックが言っていた。村を襲われたってのにお豚よしだなあ。
「わらわは千里眼があるからオーク達に何かあったら……お主らの種は無くなると思えよ?」
と、次に何かすればクロミアがワーボアを全滅させると脅していたので大丈夫だと思いたい。
オーク騒動が終わり俺達は再び山頂へと戻る。
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「何か疲れたな……」
「だね……あたし何しに行ったかわからない……」
サーニャは「みなさん大丈夫ですか!」しかセリフが無かったのでがっかりしていた。
まあ、剣も持ち出したのに主犯死亡で話がとんとんと進んだので仕方がない。
「ま、それはいいさ。次はお前の番だろ?」
「う、うん」
「ん? 帰るのかや?」
クロミアが名残惜しそうに言う。俺達が帰ったら一人だからだろうか。
「一度俺の領地に来て、サーニャの母親を捕まえる手続きを行うつもりだ。何か色々悪かったな」
「わらわはだいたい暇じゃから楽しかったぞ! でも逆に寂しくなるのう……やっぱりクリスはここに住まぬか?」
「父さんと母さんに怒られそうだからそれはちょっとな、というか死ぬ方法を探しに行かないと行けないし」
「……」
サーニャが寂しそうな顔をしていたが、あまり情が移ると別れがつらくなるのであえて声はかけなかった。
「今日はもう遅いから明日じゃろ?」
「そうなるな。何かお礼でもしたいんだが……」
「そうじゃな……あれはまだあるか? あの夜食べたピンク色の長い食べ物、あれが美味しかったのじゃ!」
ピンク色の長い……?
俺はカバンを漁り確かめると、それはあった。
「そ、それじゃー!!」
「え、これでいいの!?」
それは「魚肉ソーセージ」だった。
これも俺がドミンゴの所に行った時出来た副産物だったりする。たまたま漁港に行った時、採れ過ぎた魚をどうにかしないと腐って勿体ないと困っていたんだよ。
それでネットで見た情報を思い出しながら、ドミンゴにすり鉢を作ってもらってすり身を作り、卵を混ぜた後また練る。かまぼこみたいな感じだが最後に蒸して出来上がりという訳だ。
これも非常に好評で、ちゃんとした料理人が俺の作り方を参考に、アレンジして今の魚肉ソーセージが出来た。
かなりそれっぽいので俺は携帯食料としてよく買う。というかくれる。発案者としてマージンも入る。
地球のやつみたいに保存はあまりきかないけどね。
「とりあえず10本あるな……全部やるよ」
「本当か!? お主はいいやつじゃのう。結婚しよう……もぐもぐ」
「食うの早いし、さらっととんでもないこと言うな」
「じーっ」
「何だ?」
「何でも無い!」
ぷいっとそっぽを向くサーニャ。何だってんだ……?
夜は更けていき、次の日俺達はサンクサンドルの町へ戻ることになった。
それにしてもオルコスは一体……?
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【あの世】
カチッ、カチッ
モニターの前でスイッチをON・OFFしながらオルコスが毒づいていた。
<どうしてこちらの声が聞こえていないんですかね!? 何だか女の子に囲まれて鼻の下を伸ばしていますよ!>
<いや、アンタじゃないんだから……。でも、見た感じ二人ともクリスの事好きなんじゃない? ちょっと焚き付ければ結婚するんじゃ……>
<甘いですねぇ貴女は……彼が私の言うことを聞くと思いますか?>
<思わないけど……自分が面倒くさいやつって自覚はあるんだ?>
<何をおっしゃいますか。全てわた……彼のためにやっているんですよ。ともあれ、結婚相手はこちらの声が届く転生者でなければ操作しにくいのでこの二人は却下ですよ。くそ……動け!>
<(うーん、そろそろ見限らないと私の立場も危ないわね……)>
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難なくワーボア達を退治したクリス一行。
オーク達はクリスの領地へと向かう。
そして、オルコスのスイッチは壊れてしまったのか?
次回『年貢の納め時』
ご期待ください。
※次回予告の内容とサブタイトルは変更になる可能性があります。予めご了承ください。
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