8. 間違えた!?
さて、海に身を投げたクリス。今日はその続きから始めよう!
水中で水を飲んで気を失ったクリスに迫る怪しい黒い影! それは!
サメだ!
体長4mはありそうな巨大ザメである! クリスを餌と判断し、今まさに襲いかかろうとしていたのだ!
「シャァァァァク!」
何というするどい歯、これに噛まれたらひとたまりもない事は一目瞭然であろう。
クリスに噛みつこうとしたその時である!
「アウッ! アウッ!」
昨日クリスが助けたアシカ(?)が群れを成してクリスを救おうと現れたのだ。
サメ……というより動物全般は自分より大きいものを襲わない傾向にある。アシカ(?)達は編隊を組み、自分達を大きく見せかけたのだ!
「シャァァァァク!?」
突然の事に驚いたサメは、獲物を前に恨めしそうにその場を離れた。危機一髪の出来事だった。
アシカ(?)がクリスを咥え、急いでどこかへ引っ張って行った。
……死にたかったクリスは、一体どうなってしまうのか?
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一方その頃地上では……
「お、お母さん!? 兄さんが!」
「ま、まさか……!?」
ウェイクが叫んでいると、アモルとフィアがやってくる。
「どうしましたの?」
「奥様、何か?」
青い顔をしたシャルロッテが後から来た二人に説明をする。
「え、ええ……クリスが新しいボートの実験で沖に行ったんだけど……どうも海に投げ出されたみたい……で、浮かんでこないの……」
それを聞いたアモル。
「はふん……」
「アモルー!? フィア、手伝っ……な、なんだってー!?」
崩れ落ちるアモルを抱きかかえてフィアを呼んだが……
「……(ええええ!? クリス様死んじゃったんですか!? 密かにお慕いしておりましたのに!? 後悔しても遅いの!? ああ、目の前が暗く……)」
フィアも崩れ落ちていた。
「ちょっとフィア!? あなたまで倒れたら私が倒れられないじゃない!? ずるいわよ先に倒れるなんて!」
「お母さん……」
気絶しそこなった母を見て若干引く息子であった。
この後、めでたく(?)シャルロッテも気絶し、ウェイクは父とデュークを呼びに行く事になった。
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そして場面は再びクリスへと戻る。
「もし……」
「もし……」
「……」
「えい!」ドン!
「ほいきた!? げぇっほげほ!? なんだあ!?」
突然の衝撃に俺は目を覚ます。あれ? 俺は海に沈んだんじゃ……?
「良かった、目を覚ましましたね!」
と、すごく喜んでいる女の子が目の前に居た。周りをみると、広めの……そう、城のような場所だ。
女の子の横には屈強な男が二人立っていて俺を見降ろしていた。
「えーっと、君は?」
「あ、私はメロディと申します! で、こっちはフロウンダーとスナッパーです」
屈強な男が少し頭を下げ、また立ち尽くす。あまり居心地は良くない……。
「アウッ!」
「あ! お前は……」
「ええ、ウチのヂェニファーを助けて頂いたと聞きました! で、お礼をしようと思っていたらあなたが溺れているのを発見して、この子がここに連れて来たんです」
「このアシカ、ジェニファーって言うんだ」
「はい、ヂェニファーです!」
「ん?」
「え?」
何となく齟齬がある気がしたがまあいいだろう。
「後、この子はアシカじゃなくてオットセイですよ! 地上人がアシカを知っていただけでも驚きですけど!」
「オットセイ!? いや、アシカだろう?」
「いえ、オットセイです。少し毛があるでしょう? 耳もアシカより大きいんですよ?」
「アウッ! アウッ♪」
訂正されて嬉しそうに鳴くア……オットセイのジェニファー。ふうん、勉強になったな……じゃなくて!
「お前! 何て事をしてくれたんだ! 俺は死ぬつもりだったのに助けやがって!」
「ア、アウッ!?」
割と大きいお腹をバンバン叩いたり、髭を引っぱったりしているとメロディに止められた。
「ちょ!? 止めてください! ヂェニファーが何をしたと言うんですか!」
「俺を助けた!」
「いいことじゃないですか!?」
まあ一般的にはそうだろう。なので一から説明することにした。
「……そうだったんですね……それは申し訳ないことを……」
「分かってくれればいいんだ……ジェニファー、お前も悪かったな」
「アウッ!」
手を上げて大丈夫と宣言するジェニファー。なかなかいいやつだった。
「それじゃ、長居は無用だ。まあ心配してくれてありがとな、メロディだっけか? 世話になったな」
「……少し休んで行け」
それまで黙っていたフロウンダーが声をかけてきた。とても渋い。
「ありがとう。でも俺は早い所死なないとだから、休んでも仕方ないよ。金銀財宝も要らないからな?」
何やら宝箱を引きずってきたメロディがビクっとして止まる。
「で、でしたらここで私と一生暮らしませんか! ここなら永遠に生きていられますよ?」
「お前人の話聞いていたか? 俺は神の野郎に迷惑して死にたいんだ、永遠に生きたら解決しないだろう」
「……まあまあ」
「肩を掴むなスナッパー! ……力強っ!?」
何とか振りほどき、俺は帰りの道を聞く。
「くすん……そこの扉を出たら一旦閉めてください、そして床に蓋があるのでそれを開けたら出る事が出来ます」
「ここって水深どれくらいなんだ?」
「おお、水深までご存じとは……そうですね600mくらいだったと思います。人間ならぺしゃんこですね!」
嬉しそうに言うな。だがまあ、それはそれか。
「じゃあな、これならすぐ死ねそうだ」
「うーん、多分無理だと思いますよ? あなたの体ってかなり丈夫みたいですから水圧は平気そうですし、助ける時に水の中でも息ができるように特別なゼリーを飲ませたので、窒息も無理ですね♪ てへ!」
「……」
「……」
「おまえぇぇぇ!? 助けただけじゃ飽きたらず余計なことまで! これじゃ溺れ死ぬことが出来ないだろうが!?」
「ごめんなさいごめんなさい! まさか自殺志願者だとは思いもしなかったから!」
確かにそれもそうだ。善意と考えれば仕方ない。
「はあ……もういいよ……次の手を考えないと……じゃあな!」
俺は床の蓋を開けて再び海中へと戻った。
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クリスが出て行った後の事である。
「行きましたか……」
「……よろしかったのですか?」
メロディの呟きにスナッパーが問う。
「仕方ないわ、解剖しようとしたのにまさか刃物を全く受け付けないなんて……地上人ってみんなああなのかしら?」
「分かりません。しかし貴重な地上人のサンプルをみすみす帰してしまうのは……」
「彼が特殊なだけかもしれないけど、攻撃が効かない相手だとこちらが不利。彼が暴れ出しても恐らく負ける……とりあえず今回は地上への侵攻は見送りましょう。攻撃的と聞いていたけど、彼はきちんと話せば分かってくれそうだったわ。話が違うから長老に詳しく聞かないと……」
「畏まりました。では海底基地は元の場所へ帰還します」
フロウンダーが敬礼をし、クリスが出て行った扉と逆方向の扉を出て行くと、ゴゴゴ……という音と共に移動を開始した。
「(子種もらえば良かったかしら? 顔は好みだったのよね……)ヂェニファー!」
「アウ?」
ボール遊びをしていたヂェニファーに声をかけ先ほど持ってきた宝箱の中身を数点風呂敷に詰めてヂェニファーの首へと巻きつける。
「この風呂敷を彼に渡してきて。もう会う事もないでしょうけど、迷惑かけたお詫びとしてね」
「アウッ!」
手をあげて承知したと首に風呂敷を巻いたヂェニファーもクリスの後を追うのだった。
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死ぬことができなかったクリス。
水中で呼吸ができるようになり、また一つ人間としての何かを失うクリス。
地上に帰ったクリスを待ち受けていたのは、まさかの地獄だった。
また、今回オルコスがまったく邪魔をしなかったことの理由に気付き、クリスは戦慄する。
そしてヂェニファーは追いつけるのか?
次回『ポイントアップ』
ご期待ください。
※次回予告の内容とサブタイトルは変更になる可能性があります。予めご了承ください。
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