このモヤモヤをどうにかして欲しい!!

私には気になるとがある。

それは向かいの家の事だ。私の幼馴染みの家なのだが、その家は母子家庭で、母と祖母と幼馴染(Kちゃんと呼ぼう)の三人暮らしだった。

小学校六年生まではそのKちゃんと連れ立って学校に登校したり、たまに遊んだりもした。

けれどもその後私が東京に引っ越してからは全く疎遠となってしまい、実家に戻ってからも私が結婚したりでまた引っ越しをしたりしているうちに、幼馴染と言うよりも見知った他人となってしまった。

そして実家の母が認知症になったためにまた私は実家へと帰ってきたのだが、その頃にはKちゃんの祖母は亡くなっていて、お母さんと二人暮らしになっていた。お母さんと言ってもその頃はもう80歳近い老人だ。

Kちゃんは私より二つ年上で独身だ。お母さんは町内でも評判の朗らかな人で、いつも家の前細い路地で私の母を含め近所のおばあちゃん達と賑やかに井戸端会議をしていた。

それがここ十年の間に一人亡くなり二人亡くなり、私の母も亡くなって、とうとう五人ほどいた井戸端会議のお仲間がKちゃんのお母さんを除いてみんないなくなってしまった。

Kちゃんのお母さんは他の亡くなったおばあちゃん達の中でも取り分けあちこち体を壊していて、糖尿病やパーキンソン病など他にも色々な病気を患っていて、誰もがKちゃんのお母さんが一番最初に亡くなるんだろうなと思っていた。

ところが皆の予想を裏切り、Kちゃんのお母さんだけが健在だ。生きていればもう92歳になっている筈で、と言うのも私が『生きていれば』と言ったのは、この十年間誰もKちゃんのお母さんの姿を見た人がいないからだ。

前は良くゴミの中にオムツが捨ててあったりしたのに最近はめっきりそれを見ないし、みんなそれ相応に歳を取ると近くの介護施設に通ったりしていてもKちゃんのお母さんはそう言うものに全く参加せず、病気持ちだと言うのに全く病院に通っている感じもしない。

私も年寄りの面倒を見ていたので年寄りのいる家ってどんな感じか想像がつくが、この十年間まるで年寄りを抱えた二人暮らしの家庭とは思えないほどの静けさを保っている。

町内会でたまに心配して民生院が訪ねてきてもKちゃんは母は二階に寝ていて家もゴタゴタしているのでと言ってガンとして誰も家に寄せ付けようとはしない。普通考えると階段がある二階などに年寄りを寝かせない気はするのだが、まあ色々あるのだろう。

そして最近になってKちゃんの借りている駐車場で仕事から帰ってきたKちゃんが毎日2,3時間車に篭って出てこない。お母さんのご飯の支度は大丈夫なのか?とつい思ってしまう。

人の家庭には其々事情があるし、他人が詮索するようなものではないだろうが、目の前のお宅の事だからつい見てしまうしつい色々考えてしまう。

たまにKちゃんとすれ違った時、「お母さんはお元気?」と聞くのが私は精一杯だ。

この前久しぶりにKちゃんのお母さんの夢を見た。

何故か我が家のソファに腰を下ろしたKちゃんのお母さんが、青い顔で何処がとは言わなかったが痛い痛いと言う夢だった。

それ以来、Kちゃんのお宅に誰か踏み込んで、いったいKちゃんのお母さんがどうなっているのか教えてほしい衝動に駆られる。こう言う場合、民生院でも強制的に家に入って確かめる事は出来ないのだろうかと、思いながらも嫌な予感しかせずに悶々と日々過ごしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る