第29話 最強の二人
「酷い有様ですね〜」
「そうだな……よくこれで全員無事だったな」
「むやみに触るでない!爆発後から痕跡を見つけるのは大変なんじゃぞ!」
「ごめん」
「悪い……」
「先日、内容は忘れてしまったのじゃが魘されて眠れなかったのだ。それで少し気が短くなっておった。こちらこそすまぬ」
それにしても何か手掛かりになる物はどこかにないじゃろうか?
このままにしておくといずれ犠牲者がでかねないのじゃ。なんとしても探し出さねば……
しかし何であろう。総毛立つ様なこの感覚。
わしゃはこれを知っている。
思い出せない……
「何を悩んでおられるのですか?」
「そうね。昔ならすぐに検討をつけていただろうに」
「お前達は……」
懐かしく憎らしい夢の内容が頭に流れ込んでくる。
「この方達は?」
「雪!離れてろ!」
「貴方は感が良さそうだ」
「お久しぶりです。晴明!」
声と共に晴明の顔が険しくなる。
こんな恐ろしい顔をしているこの方を俺は知らない。
「何でここに……」
「それを言い始めたら君も同じじゃないか」
「少し頭が弱くなりましたね〜」
「この方はどなたですか……」
「わしゃの……元嫁と元親友じゃ」
「元とは御挨拶だね」
「道満の方こそ、あれ程の事をしておいてよくもわしゃの前に姿を現せたのう」
「道満?!安倍晴明に並ぶ陰陽師の!」
空が驚くのも無理はない。
日本で最強の二人が向かい合って話しているんだから。
「私には何かないの?」
「梨花。何しに来たんじゃ?」
「やっと聞いてくれた!貴方が私にしてきたことよ」
「なんの事か分からぬ」
今ここでやり合うのは分が悪い。どうすれば……
「それはそうと君が生きている事は少なからず驚いたよ。まさかこんな荒業に出るなんてね」
「こんな事二度としたくない」
どうやって空達を逃がせば良いのじゃ。
逃げても痕跡を追われるだけか。
何か良い考えは……
「そうだろうね。咄嗟に人を利用して今に至るのだから」
「本当に言葉遣いが良くなったの〜人の痛い所ばかり触れおって」
「おっと……瞬間移動ってやつか」
普通に逃げるだけでは駄目なのは晴明にもしっかりと分かっていたか。
この国の民は皆、私の人質であることも当然分かっているね。
また近く会えることを楽しみにしてるよ晴明。
「晴明!どうしたんだ!」
「隆!走れ!」
「どうしたんだよ!」
「後で説明する」
「分かったよ」
俺がいない間に何があったんだ?
自分だけ状況が把握できてないのが少し悔しい。だが最強の晴明がその場で何とか出来ずに逃げてくる事態とはただ事では無いのだろう。
今はとにかく晴明の後ろを追いかける事しかできない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます