老人病院

長谷川 ゆう

第1話 二千三百年、日本、冬。

二千三百年、冬、日本。


日本では、何度かの不景気を繰り返しながらも、少子高齢化の時代は終わりをむかえた。


第三次ベビーブームが起き、多子若年齢化が起こる。


いわゆる、若者が増え、高齢者が減り、逆三角だった若者の人口のすそが広がり、本来の社会のバランスに戻るも、若者が増えすぎた時代に入る、



21世紀には、あふれるほどあった特別養護老人ホームは、ほとんど姿を消して入れ代わるように、保育園、幼稚園、小学校、中学校、大学が、爆発的に増えた。



社会も活気にあふれ、中学校だけを卒業しても、正社員の仕事が山ほどあり、面接を受ければ入社できるほど、引く手あまただった。



0歳から65歳までの人口が9割をしめ、高齢者ら日本の人口の1割にも満たない。



日本では 一人一人、産まれた時にマイクロチップを脳に入れられ、電話、パソコン、スマホは、そのマイクロチップに内臓される。


それぞれを使用するためには、15秒両目を閉じ、オフにしたい時は、また15秒目を閉じると、外部からは遮断される。


ハッキングや個人情報流出や乗っ取りなど心配されたが、政府が徹底した管理をし、違法な行為をした場合は、一生刑務所暮らしが待つ。


トラブルに巻き込まれた場合は、自分が産まれた病院で、マイクロチップの初期化をおこない、今までの人生と記憶は、そのままで、トラブルだけ起こした部分だけ初期化され、クリアにされる。



マイクロチップは、毎年のように新しく更新され、高齢になるほど、使う事もなくなり、本人の意思で、マイクロチップを外す自由もある。



外されたマイクロチップは、産まれた病院で回収され、政府認可のもと処分された。



特別養護老人ホームは、老人病院と併設され、1つの市や街に1つしかなくなり、老人病院と呼ばれるようになる。



核家族から三世代が当たり前になった家では、祖父母を家で看取ることが、多くの家庭で一般的になった。


そんな中、老人病院に入るのは、家族も頼れない身寄りのない人達だった。


それと同じく、老人病院では10人のヘルパーと3人の医師と1人の看護士がいる。



正社員の仕事が山とある中、わざわざ資金繰りの厳しい、安月給で、体力気力すら使う、彼ら彼女らも、いろんな過去を抱えてた。



東京郊外の街に、1つの老人病院がある。

入居者が、たった3人の「ゼイタク」と言う老人病院だ。



若い活気に溢れる日本の中で、その場所はひっそりとある。



まるで、活気に満ちた若い世代から距離をとるかのように。


まるで、この社会からひっそりと身をひそめるように。





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