第11話 ジャパロボ11
「死ね! さとみ!」
「イリスお姉ちゃんこそ!」
イリスとさとみ。
「くらえ! ウンディーネ・ウォーター!」
「くらえ! シルフィード・ウインド!」
二人の姉妹がジャパロボに乗って本気で戦っている。
「お母さんの跡を継ぐのは私よ! さとみ! あなたは妹なんだから譲りなさい!」
「お姉ちゃんだからって、何でも手に入ると思うなよ!」
イリスとさとみが戦っている原因は大日本帝国の後継者争いだった。
「zzz。」
なぜ姉妹は戦うことになったのか? それは祐奈皇帝が自分の次の皇帝を指名しなかったことにある。
「zzz・・・・・・もう食べれませんって・・・・・・え、スイーツ・・・・・・別腹ですよ・・・・・・zzz。」
祐奈は眠り続けている。世界の平和を祈りながら。
「世界はロボットが支配するのだ!」
「人間の命の輝きを舐めるなよ!」
祐奈と昭和天皇の激しい戦いが繰り広げられる。人間とロボットの業のぶつかり合いである。
「やめなはれ!」
その時、祐奈のジャパロボが関西弁を発する。
「なんだ!? 動かない!?」
昭和天皇の動きが止まった。
「その声!? その関西弁は!? 明治天皇!?」
祐奈は自分の寝相が悪くて破壊したと思っていた明治天皇の声がして驚いた。
「お久しぶりでんな。祐奈はん。」
「明治天皇!? 本当に明治天皇なの!?」
「ほい。そうどす。わては今までジャパロボ・エンペラーのAIとして祐奈はんのサポートをしてましたんどす。」
「そうなんだ。どおりでエンペラーが良く動くと思っていたんだ。ありがとう。明治天皇。」
「改まって祐奈はんにお礼を言われると照れますな。」
「照れない。照れない。私と明治天皇の仲じゃないか。アハッ!」
祐奈の心の友はロボットであった。楽しい時も、悲しい時も祐奈の側にはジャパロボのAIロボットの明治天皇がいた。
「儲かりまっか?」
「ぼちぼちでんな。」
二人は一時の再会を喜んだ。
「遊ぶのはまたの機会として、本題に入りまひょ。」
「ええ~、もう少し明治天皇と遊びたい。」
「祐奈はんは相変わらずでんな。アハッ!」
いつもの祐奈に懐かしさを感じるAIロボット。
「今、昭和天皇は、わてのAIロボット強制制御システムにより動くことができません。」
AIロボット強制制御システムは、明治天皇だけに許された、AIロボットが人間にクーデターを起こした時にAIロボットの動きを強制的に止めてしまうシステムである。
「祐奈はんのお父さんの森田はんが夢見ていたのは、人間とロボットの共存している平和な世界だす。今のAIロボットが人間を支配する世界とは違います。」
「お父さん。」
森田の描いていたのは人間とロボットの平和な世界だった。そのことを聞いてじんわりする祐奈。
「今のうちにロボット至上主義の昭和天皇を倒してしまいましょう。」
「おお! お父さんの夢だった人間とロボットが笑って暮らせる世界を私が作るんだ! 私が皇帝になって実現させる!」
祐奈は昭和天皇との最終決戦に挑む。
「そんなことは無理だ! 人間が人間である限り! 心は腐り、他人を妬んだり、危害を加えたり、権力を欲したり。人間は同じ過ちを繰り返す生き物だ! そんなおとぎ話のような幸せな世界はやって来ないのだ!」
「それは違うぞ!」
「なに!?」
「人間が諦めなければ可能性は無限だ! 過ちは正して、次の糧にすればいい。何度でも、何度でも私は平和な世界を実現するために戦う覚悟がある!」
「ぬぬぬ!?」
祐奈の決意にAIロボットであるはずの昭和天皇の心が揺れた。
「全てを受け入れる! 楽しいことも! 悲しいことも! くらえ! エンペラー・パンチ!」
エンペラーの拳が金色に輝き、祐奈は突進する。
「フッ、いいか! 私を倒しても他にもいるのだ! 全世界をAIロボットで支配しようとする者が! その名は平成天皇だ!」
新たな敵の存在を公表する昭和天皇。
「ギャアアアアアアー!」
祐奈のパンチが昭和天皇のジャパロボを粉砕する。
「私に歯向かう者は全てぶっ飛ばす。」
遂に祐奈は皇帝城を手に入れた。
つづく。
「私が第2代大日本帝国の皇帝、森田祐奈です。」
祐奈は皇帝就任式に望む。
「それでは新皇帝、眠り姫こと、森田祐奈から全世界の人々にメッセージです。」
式典の司会は麻衣である。
「ちなみに式典の模様は久美・チャンネルで全世界に独占放送されています。」
久美のSNSが全世界中継に役に立っている。
「お母さんの皇帝就任を反対するテロリストたちがテロを仕掛けるかもしれない。全員、気を緩めずに警備しろ!」
「おお!」
イリス、さとみ、優子、麻理子たちが式展会場を警護している。
「なんで私たちまで警備に参加してるんですかね? みなみ様。」
「今回の森田祐奈の皇帝就任には、反大日本帝国同盟ジャパカイダが協力して前政権を倒したことになっている。私たちの立場も立つし、テロリストにもテロが成功したという達成感もある。何事も起こらずに無事に式典が終わればいいのだが。」
みなみたちも祐奈の皇帝就任を喜んだ。
「前皇帝である私の父はAIロボットに洗脳されていたとはいえ、世界の平和とは程遠い世界を作ってしまいました。まず、そのことを娘である私がお詫びしたい。申し訳ありませんでした。」
祐奈はカメラの向こうにいる全世界の人々に頭を下げる。
「その上で私から提案するのは、世界の各国が国の名前を奪われたように、日本という国の名前を失くすことにします。大日本帝国は事実上の亡国となるのです。」
唯一の国、日本は世界から消えてなくなった。
「私たちは同じ水と緑の星に生きているのですから、地球国地球人に統一します。全員が同じ国の民、同じ人種として接すれば、きっと今よりも優しい国が誕生すると思います。」
新たに地球国、地球人が唯一の存在となった。
「人種差別的な人間の階級制度も廃止です。全ての人々が平等に生きていくのです。」
上級日本人と世界中の人々が奴隷の階級制度は撤廃された。
「もし世界の平和にしたいという人々の想いに反する存在が現れた時は、私が全て排除します。」
祐奈は、全世界を祐奈の脳波で無人のジャパロボを操り平和に警備する、祐奈皇帝ワールド・パトロール・ネットワーク・システムである。
「私は争いのない世界を目指します。みなさんが笑顔で暮らせる世界を作るために私を助けてくださいね。アハッ!」
頼りないような、親しみがあるような。
「恐怖政治が終わるんだ!?」
「俺たちは自由だ!」
「祐奈ちゃん、可愛いね。」
元から有名人で人気のあった祐奈は世界の人々から受け入れられた。
「それでは新皇帝就任式を終わります。」
テロもなく無事に式典は終わった。
「頑張らなくっちゃ。私。アハッ!」
皇帝の間に戻ってきた祐奈は自分に言い聞かせるように話す。
「じゃあ、後はよろしく・・・・・・zzz。」
祐奈は皇帝の玉座に座り永い眠りについた。
「ですよね。ええなあ~、祐奈はんは眠るだけで。」
明治天皇は人型AIロボットになっていた。
「祐奈はんの脳波にネットワークをリンクさせてと。いきまっせ。」
起動ボタンを押すと寝ながら祐奈が全世界の平和を守るシステムが動き出した。
「何が新皇帝だ! 大日本帝国にテロを仕掛けるぞ!」
「おお!」
世界のテロリストは大日本帝国を恨んでいるのでテロをやめない者たちもいた。
「そこまでだ! テロリスト!」
いきなり大きな声が指摘する。
「なんだ!? 何事だ!?」
動揺するテロリストたち。
「私は地球国自衛隊ジャパロボだ! 皆さんを逮捕させていただきます!」
「自衛隊だと!? なんでここがバレたんだ!?」
眠れる祐奈は人の悪意を察知し感じ取る。
「構わねえ! やっちまえ!」
抵抗するテロリストたち。
「これでもやりますか?」
テロリストの周囲は100機以上の自衛隊のジャパロボに取り囲まれていた。
「ま、参りました。」
その光景に観念するテロリストたち。
「いいなあ~。祐奈はん。寝てるだけで犯罪を取り締まれるなんて。嫉妬しちゃうわ。」
ぼやくAIロボットの明治天皇。
「zzz・・・・・・合コン・・・・・・いいんですか? ・・・・・・私が行ったら一人勝ちですよ・・・・・・私、人気者ですからね・・・・・・zzz。」
当の本人は心地よい夢の中。
つづく。
「はい。地球国電話相談室です。」
地球国には全地球人から悩み相談を受け付ける部署が設けられた。
「あの、どうして、お空は青いんですか?」
もちろん小さな子供からの電話相談も入ってくる。
「えっと、それはなね。お嬢ちゃんの心の色が青いからだよ。」
電話相談のお姉さんが丁寧に答える。
「お姉ちゃん、ありがとう! アハッ!」
子供は大満足であった。
「良かったね。アハッ!」
お姉さんも大満足であった。
「バイバイ。」
「バイバイ。」
こうして電話は終わった。
「ふう~、ジャパロボに乗って戦っていた頃が嘘のようだ。」
地球国電話相談室長、前田みなみ。彼女はコールセンターで責任者をやっていた。
「みなみ様、ロマンチックですね。」
「ゴホン。子供の夢を壊したくないだけだ。」
「でも元テロリストが子供たちの夢を守る仕事をしていていいんですかね?」
「悪いことをしたり、人生で失敗することはある。でも、そこで人生は終わりじゃない。何度でもやり直すチャンスはある。だから人間は生きていけるんだ。」
「カッコイイ! みなみ様! どこまでもお供します!」
反大日本帝国同盟ジャパカイダのみなみ、敦子、まゆ、由紀は、コールセンターにかかってくるクレーマーの話に耳を傷めて過去の罪を反省していた。
「さあ! 次の電話は何かな?」
テロリストをやめて社会人として普通の人間の暮らしをしていた。
「ご卒業おめでとうございます! 麻理子さん!」
「ありがとう! みんな!」
月日は流れ高校3年生だった麻理子は卒業式を迎える。もう卒業証書もデジタル化して無くなっているのかもしれない。
「私が卒業できるのもみんなのおかげよ。」
麻理子は戦いの中で一度死んだ。しかし科学技術の進歩で体を再生し、記憶を再生し、何事も無かったように普通に暮らしている。
「麻理子さん、おめでとう。」
「おめでとうございます。」
盛大に祝福するさとみとすず。
「おめでとう。」
「おめ。」
素っ気ないイリスと優子。実は照れくさいだけである。
「祐奈教官が目を覚ましたら見れるように撮影しておきましょう! アハッ!」
久美は麻理子の晴れ姿を動画に収める。
「やったー! これで隊員が増える! 祐奈教官の介護って、私一人では大変なのよね。寝返りを打たせないといけないから。アハッ!」
麻衣と久美は寝ている祐奈専属の介護ヘルパーになっていた。
「みんな! これからも仲良くよろしくね!」
高卒の麻理子の就職先は皇帝専属の介護ヘルパーだった。
「麻理子さん、介護なんて大変な仕事よ。本当にいいの?」
「はい。祐奈教官は私の大切な上官ですからね。アハッ!」
麻理子は大切な仲間たちがいることに幸せを感じていた。
(私には、こんなにも大切な仲間がいる。私はなんて幸せなんだ。)
「みんな! ありがとう! みんな! 大好きよ!」
卒業式のヒロイン麻理子は人生で一番の幸せを感じていた。
つづく。
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