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 ソファに座り、書類を渡されわたしはざっと目を通す。うん、これなら読めそう……と思っていたのだが……。


「こ、これ本当に読み上げないと駄目ですか?」


 しょっぱなから凄いものがやってきた。いや、読めないわけじゃない。わたしが生きていた当時のシーバイズよりちょっと昔のだから、読みにくいと言えば読みにくいものの、読むことは出来る。

 書きとるものを準備していたイエリオさんが不思議そうに首を傾げた。


「そんなにまずいものだったんですか? えーっと……ああ、これはシーバイズの王城と思われる城から発見された手紙ですね」


 わたしの後ろから書類を覗き込みながらイエリオさんが言う。そうだろうね、宛名として記載されている名前は、わたしが生きていた時代の二代前の王の名前だ。送り先が王様なのは間違いないだろう。


「私たちの間では密書だと推測されているんです。何か歴史的重要なものではないかと。なにせ、何重にも隠されて保管されていたものなので」


 千年の時には叶わなかったようで、発掘をされてしまったようだ。


「密書……ですか……」


 そんな歴史的価値のあるものには到底思えない。


 何故ならこれは――ただのラブレターだからである。


 しかも、なかなか言い回しとして使わないような言葉ばかりで、なんというか……センスがない。これならまだストレートに言った方がマシだろう、というレベル。こだわろうとして見事にから回っている。

 差出人は誰だ、と見てみれば、そこにはその当時の第二王妃の名前が書かれていた。

 二代前の第二王妃といえば、ダンスが上手で有名……だったらしい。わたしは貴族じゃないので詳しくはない。シーバイズの王族や貴族は、平民と距離が近かったものの、流石に平民がパーティーに呼ばれるようなことはそうそうない。


 とはいえ、平民にも噂が届くようなお人だ、本当に上手だったんだろう。でも、手紙を書く才能はなかったのか……。


「……これ、このまま闇に葬りませんか」


 一つの才能で有名になった人間のあまりにも駄目な部分を知ってしまい、逆に可哀そうになってきた。読み上げるのは簡単だが、このままなかったことにしてあげたい。

 これは世に出しては駄目だ。それが分かったからこそ、王も何重にもして隠したのだろう。


「一枚目からですか!? うーん……ざっくりと、内容だけ教えていただいても?」


 未だ納得していないようだったが、イエリオさんは食い下がる。まあ、それが彼の仕事だからな……。

 彼が解明してしまったときにはもうわたしの手には追えないということで。


「ラブレターなので……そっとしておきましょう」


 そうわたしが言うと、イエリオさんは少し気まずそうに咳ばらいをして、「次行きましょうか」と言った。

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