80
いざ屋台が並ぶ場所に来れば、イカ焼きだけでなく、いろんなものに目が移る。万道具の展示に夢中になっていたけれど、こうやって食べ物に囲まれると、自分が空腹だったことをようやく思い出した。
楽しみで朝一番、開場と共にやってきたけれど、そこからずっと歩いて展示を回っていたのだ。そりゃあ、多少は休憩を挟んだけれど、何か食べたのは姫鶴のところの小金焼くらいなので、お腹も空くわけだ。
わたしたちはイカ焼きだけでなく、目についた屋台のものを購入していく。お好み焼きとか、焼きそばとか、りんご飴とか。
東洋風の世界だからか、フランクフルトやケバブみたいな、外国っぽいものはほとんどなく、王道のものしかないが、それで十分とも言えるくらい、屋台が並んでいた。
食べるものだけは、前世とほとんど変わらないので、本当に助かったと思う。代わりに、中世ヨーロッパ風の世界に転生して和食を広めてひと儲け、みたいなことはできなかったけど。
それでも、親しんだ味が当たり前のように食べられるのは素敵なことだ。
それにしても……。
「……ちょっと買いすぎたかも?」
あれもいいな、これもいいな、と興味にしたがっていろいろ買っていたら、結構な量になってしまった。お金には困っていないけれど、これは消費に困ってしまう。
屋台の並びが途切れるところに設置されていた休憩所に、丁度空席があったので、わたしたちはそこに座る。テーブルがいくつか置いてあって、椅子が二脚ずつ配置されているような場所だ。一応、追加で椅子を持ってくることもできるみたいだけど……まあ、二人だし、いらない。
椅子に座ると、予想以上に自分が疲れていたことに気が付く。歩きっぱなしだったもんね……。万道具にテンションが上がって疲労に気が付かなかっただけだ。
ちらっと透くんを見るが、彼の方は全然疲れが見えない。……男女で体力の差があるのかな。万道具の宅配とか、結構頼むことも多いしなあ。わたしだって宅配をすることはあるが、わたしのほうが店に残っていた方がなにかといいため、どうしても透くんのほうが多くなる。
それとも、わたしの方が、今日、動いているからかな。万道具に興奮して無駄に動いている自覚はある。
ま、ともあれご飯を食べて、栄養と体力を回復しよう。
――余談だが、買いすぎたと思った料理たちは、透くんによって無事消費され、何も残らなかった。男性の胃袋を舐めていたともいう。よく全部食べ切ったな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます