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「この教室に展示されてる万道具は『人間関係』を題材に作られてるものだ」


 その説明から入って、一つひとつ、赤希は説明をしてくれる。結構おおざっぱな解説ではあるが、要点はしっかり押さえているし、話自体が面白くて、すっと頭に入ってくる。確かに、わたしみたいな、既に万道具関係の仕事についている人間からしたら物足りないけれど、でも、素人相手だと丁度いいんじゃないだろうか。


「――で、これが相性診断の万道具、『結び相』」


 この教室に展示されている中ではかなり大きい方の万道具で、一般的な机と同じくらいのサイズがある。机と違って足を入れるような、天板下のスペースがない、ほぼほぼ直方体ではあるが。


「試しにやってみるか?」


 相性診断の結び相。前世の記憶があるわたしからしたら、お遊びの玩具にこんなものがあったなあ、という印象なのだが、万道具なので当然『ガチ』である。

 天板の上に手のひらを載せると相性診断が始まるのだが、手のひらから遺伝子情報とかを読み取って、相手との相性を調べるのだ。


「いいですね、やってみましょう」


 わたしは天板の上に手のひらを置く。

 サイズ感的には、個人でも作れる万道具だが、天板を作るのがすごく大変なので、わたしはまだ作っていない。制作に専用の道具が必要だし、素材もいろいろ必要な上に高額なものが多いのだ。趣味で作るにはちょっとハードルの高い万道具の一つ。

 学園には専用の道具もあるし、授業での制作ともなれば、素材の確保も一個人でやるよりは楽なのかな……。うらやましい。


 ――と、そんなことを考えてると……。


「おや」


「はぁ!?」


「そ、そんな……っ」


 わたし、赤希、後ろで様子を見ていた透くんの三人で、揃いも揃って声を上げてしまう。

 それもそのはず。

 わたしと赤希の相性診断の結果は、九十二点。かなり相性がいいことになる。


「ま、待ってくれ! もう一回、もう一回!」


「別にいいですけど……」


 けれど、何度やり直してみても、相性は92点だ。


「姫鶴と! この点数を! 出したかった!」


 悔しそうに声を荒げる赤希。

 わたしには、この点数に心当たりがある。

 わたしはヒロインで、赤希はメイン攻略キャラ。もはやゲームの世界に似ているだけの別世界ではあるけれど、ベースが『黎明のアルケミスト』ならば、こうなるのもある意味必然である。


 まあ、この相性診断って、あくまで遺伝子的な相性なだけであって、結婚して子供を産む、という一点を考えればわたしと赤希の相性は九十二点なのかもしれないが、感情的に考えたときはまたちょっと別の話。実際、上手くいきやすいとはいうけれど、確実って程でもない。

 だから、わたしとの相性が良くたって、恋人として結ばれて幸せになる、と断言できるわけではないのだ。


 でも、感情で考えたとき、姫鶴が青慈から赤希に乗り換えるか、と言われると、そっちのほうが無理な気がする。

 どうフォロー入れるべきかな……と考えていると。


「ぼ、僕も万結さんとやりたいです」


 透くんが声を上げた。

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