02
わたしは生前、どうしようもないゲーマーだった。
そう、生前。
ソシャゲへの課金額以外はこれと言ってあまり派手でない、よくあるゲーマー生活をしていたわたしは、流行りの異世界転生に巻き込まれていた。
異世界転生の中でも一番多いパターンであろう交通事故で生まれ変わったわたしは、『黎明のアルケミスト』の世界へと産声を上げた。
『黎明のアルケミスト』は和風ファンタジーを世界観とし、両親の代わりに育ててもらった祖父が亡くなった際に受け継いだ『万道具屋(よろずどうぐや)』を経営するため、学園に入学し、そこで万道具や経営について学び、恋もするという、経営シミュレーションと恋愛シミュレーションを掛け合わせたゲームだ。
万道具とは、魔法の道具みたいなもので、不思議な力を持つ特殊な道具の総称である。
万道具の見た目は、世界観に合わせて和なテイストなものが多いが、何故かタイトルはアルケミスト。作中では万道具を作る職人を『万道具創師』と書き、アルケミストと読むのだ。最初は不思議に思ったものの、まあそういう設定ならそんなものか、とすぐに気にしなくなった。
話題の乙女ゲーム、とはいえ、わたしは恋愛パートはほとんどやっていない。おまけと言いつつ本編と変わりない、いや、それ以上のボリュームを誇る経営パートに夢中になっていたのだ。
大半のユーザーがスキップするであろうミニゲームの素材集めや素材加工も、オート設定にできるはずの経営パートも、全部、自らやった。
もともと、『黎明のアルケミスト』は、やや子供寄りの一般層向けのゲームを開発している会社が、初めて乙女ゲームに手を出した、という触れ込みで売り出されたゲームなのだ。今までの開発スキルがある分、経営パートだけでも十二分に面白い。
そんなわけで、バリバリに経営パートにのめりこみ、すでにある程度のゲーム内ノウハウができてしまった(正直、攻略ウィキ並みに攻略情報は頭に入っていると自負している)わたしは、ゲーム本編と違い、学園をスキップしてそのまま祖父の『万道具屋』を継いだ。
いくらゲームとほとんど同じ世界とはいえ、こうして意思を持って動けるのなら、正直ゲームと同じ行動をする意味はないと思う。同じ展開になるとは限らないし、そもそも本編シナリオを知らないので、物語として、主人公としての正解もわからない。
わたしのプレイスタイルを貫くならろくに恋愛生活も学園生活も送らないことになるのでぶっちゃけお金の無駄だと思うのだ。
学園に入る前、祖父を亡くして店を継ごう、と思うのではなく、比較的幼少期から記憶があって店を継ごうと決めていたから、ゲーム原作とは違い、祖父からいろいろ教えてもらっていたから、わざわざ学園に通う必要ないのである。
そうして、店を継いでから一年。
今日もいつも通り店を開けていたのだが――。
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