14.こっそりエレメント

 この世界の教会は、入ったところの広間の正面に信仰している神様の像がどんと鎮座している。ちなみにどう見てもショタ系、これはアニメで見たやつと一緒だなあ。何でショタなのはか分からない、多分『のはける』作者の趣味だろうけど。


「新しくキャルン様がおいでになり、クランブレスト王国の城におわす聖女様は四名となりました」


 この教会を治める神官様は、神様とは逆に白髪ロン毛お髭も長い、ゲームとかで魔法使いによくいるようなお爺ちゃんである。多分、長いことここで神官職を務めておられるんだろうなあ、という感じ。


「我らの世界を造られた偉大なる神。その恩寵とも言える聖女様がたのお力は、神への祈りにより発動することが分かっております。その発現手段は個々によって異なりますが、それが自分にとって自然であれば問題はない、と言われております」


 で、前世でのイメージどおりな教会のホールには私も含め、聖女が四人勢揃いしている。それぞれが距離を置いてぽつん、ぽつんと座っているんだよね。ここにお座りくださいって言われたわけでもないんだけど、先輩たちが場所空けてるからなんとなく。

 神官様の説明は新米である私向けなんだろうけれど、他の三人もうんうんという感じで聞いてるんだよね。お約束なんだろうな、この空気だと。


「では、我らが神への祈りを捧げましょう。その身の内に、聖女様がたに授けられたお力の湧き出んことを」


 神官様の言葉に応じて手を組んで、目を閉じて、無言のままじっと祈ってみた。他の三人は慣れたもんだろうけれど、私は初めてだからね。うまく行かなくても怒らないでね?


「……ん?」


 しばらく祈る……というかどう祈っていいかわからないから瞑想していると、腹の中にぽっと温かみが湧き出たような気がした。これかな……もうちょっと瞑想してみよう。うんうん、だんだんあったかくなってきた。


「ふむ。キャルン様、感じ取れましたかな」

「え? あ、はい」


 おいおい、何も言ってないのに神官様、ばっちり気がついてきてるよ。嘘をついても仕方がないので、素直に頷いた。

 『のはける』では修行の描写とかまるでなかったから、実際にやってみないとわからないのであった。つーか、腹の中がぽかぽかするなあ。いや、お腹は冷やすより温める方がいいに決まってるんだけど。


「……キャルン様。どういう感じですの?」

「何だか、身体の中がぽかぽかしてくる感じがします」


 エンジェラ様に尋ねられたので、これまた素直に答える。他の皆はどんな感じなんだろうなあ、と思っていると。


「わたくしは、風が集まってくるような感覚ですわね」

「あら。水がたゆたうような感じではないんですのね」

「大地から力が湧き出るような感覚ですわ」


 エンジェラ様、コートニア様、ピュティナ様。それぞれに、違う感覚があるようだ。

 ……というか、この感じってあれか。べただけど、地水火風ってやつ。

 私はぽかぽかするってことは、火なんだろうな。エンジェラ様が風、コートニア様が水、ピュティナ様が地。

 今お城にいる聖女はこの四人だから、バランスが取れてるのかな。いや、外にも聖女はいるんだよな? そっち、どうなるんだろう。


「温まる感覚は、人を癒やすことに長ける力かと思われますね。キャルン様は、癒やしの聖女であらせられるのでしょう」

「そうなんですか?」


 おっと、神官様からそんな話が出てきたぞ。初耳……でもないか?

 『のはける』のキャルンは自由奔放な言動と、それから「そばにいると癒やされるから」という感じで逆ハーが出来上がってた感じ……うわあそれか。

 そうすると、エンジェラ様も癒やし系だったと思うんだけど。方向性は違ってて、気分が晴れるとか言ってたっけな、魔帝陛下が。あと毒とか呪いには強かったはずだ。


「わたくしは解き放つ能力、ということのようです。呪いや気鬱などから、人を救い出すという」


 なるほど。この現世だとそういう解釈になるんだ、エンジェラ様の力は。


「わたくしは解毒が主ですわね。土地から多すぎる塩を押し流したりもしますけど」


 おお、毒はコートニア様に行ったのか。いや、多分得意分野と言うだけで、他の皆もできることはできるんだろうな。

 そうすると、ピュティナ様は……地だから、えーと。


「わたくしは守るものですわ。大地のお力をお借りして壁を作ったり、穴を掘ったり」


 ………………何か一人だけ、めっちゃ方向性が違うんですけどー!?

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