冬の山小屋
雨世界
1 ……お誕生日おめでとう。
冬の山小屋
登場人物
駒野幹 高校生 十六歳 追いかける少年
小竹燕 高校生 十六歳 いなくなった少年 鳩という名前の十四歳の中学生の妹がいる
小竹鳩 中学生 十四歳 しっかりものの少女
プロローグ
……お誕生日おめでとう。
本編
……君を絶対に死なせない。
駒野幹が小竹燕と出会ったのは小学生のころだった。
幹と燕は喧嘩友達のような間柄で、なんでも自分たちの素直な気持ちをそのままの偽りのない感情のままにいい合える友達だった。(少なくとも幹はそう思っていた)
そんな二人の関係が変わってきたのは、二人が中学生になったころの話だった。
勉強が忙しくなった。
部活動が忙しくなった。
二人それぞれに知らない顔の友達ができた。
教室も別々の教室になった。
二人は同じ高校に進学した。都内でも、いや日本でも一番の、進学校の男子校だった。
高校生になった、成長した二人は、もう子供のころのように、自然となんでもお互いの素直な気持ちを相手に伝えることができなくなった。
それでも、なんでも素直に言いあえなくなっても、お互いに知らない友達ができても、相手に言えない秘密ができても、二人だけで過ごす時間がすごく減っても、……それでも二人はずっと友達だった。
二人は世界で一番仲のいい親友同士と言う関係だったのだ。
……燕。僕は、どうしたらいい?
自分がこの世界に生まれてきた意味を知りたかった。燕といれば、それがなんなのか、ほんの少しだけだけど、わかるような気がした。
小竹燕が世界から消えた日。
その日はちょうど雨が降っていた。
とても、とても強い雨だ。
一人、土砂降りの雨を見つめる幹の横に、燕はいない。
その日、幹は雨の中で一人ぼっちだった。
……一人ぼっちで、ずっとずっと、泣いていた。
幹の思い
少年は不安を感じていた。
なにかとても良くない出来事が起こるような胸騒ぎがした。
それは、さっき急に空が真っ暗になって、冷たい雨が降り出すまで、とても怪しい月が夜空に輝いていたからなのかもしれない。
だから少年は急いで家に帰った。
そして家に帰った少年は、両親からある出来事があったことを告げられた。
少年の不安は当たっていた。
少年の親友の少年がいなくなった。
現在も行方がわからないままらしい。
少年は走った。
親友を探して。
夜の中を、雨の中を、両親の言葉を振り切って、ただ一人、親友の姿を探して走り続けたのだった。
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