第10話

 ようやく、ここまで来た。彼女。横になっている。多少の熱。

 乞われるまま、彼女のとなりに横になる。

 眠りはしなかった。彼女との別れが、近付いている。それだけを、なんとなく、思った。

 彼女。

 きっと、心がしんでいて、誰も好きになったりしなかったのだろう。それを、なんとかして、生き返らせた。そして、彼女は、熱を出した。熱が出るというのは、生きているということだった。心がしんだ人間は、熱が出たり身体に不調が起きても何も感じない。そういうセンサーの部分が、心だから。


 彼女。


 彼女の手が、そうっと伸びてきて。自分の身体を、触ってくる。頭。顔。胸。腰。太もも。膝。脚。順番に、ゆっくり、何度も。


 彼女自身。はじめての自分の感情を、もてあましているのだろう。自分のことが好きになったけど、どうやって求めればいいのか分からない。それで、ひっしになって、身体をぺたぺたと触っている。

 されるがままにしていた。触るだけなら、別に、どうでもいい。ただ自分が、眠れないというだけ。


 彼女は。生き返った。


 これで、ようやく。


 殺せる。

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