声なきSOS

RURI

第1話 誰も居ない家からの緊急通報

 プルルルルル……。

 真夜中の通信指令室に、電話の音が鳴り響く。


「またか……」

 ぼそっと通信本部の担当官が呟いて、受話器に手を掛けた。


「119番、消防署です。火事ですか、救急ですか?」

「……」


「119番、消防署です。火事ですか、救急ですか? それと、あなたのお名前を教えて頂けますか?」

「……」


 緊急通報である以上、相手から何も無しに電話を切る訳にもいかない。何かの理由で、声を出せない状況下にいる可能性もあるからだ。


「落ち着いて聞いて下さい。今からそちらに隊員が向かいます。差し迫った危険が無い限り、落ち着いてじっとしていて下さい。」


 電話の番号から、住所は簡単に割り出せる。割り出された場所は険しい崖の上にぽつん、と立っている灯台のすぐ下に建てられている小屋。その昔、まだ灯台が現役だった頃にはメンテナンスの為に人が住んでいたそうだが、もう使われなくなって10年以上も経っていて誰も住んではいないはず。


「至急、至急。中心司令室から各署へ。ただ今、防人岬さきもりみさき灯台下の小屋から入電。こちらの問いかけに一切の応答無し。付近の署から、消防車、並びに救急車各1台を向かわせる様に」


「中心司令室、中心司令室。こちら、防人署。了解、消防車と救急車それぞれ1台ずつを向かわせます」


 無線連絡の応答を確認し、ふぅ、と溜め息を付いて司令官は椅子に深くもたれ掛かる。


「全く、不思議なこともあるもんだ……」


 通信指令室は再び、静寂に包まれた。

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