第25話 ボウリングはお好きですか?

 駅前で待ち合わせ。10分くらい前についてすこしぶらぶらしていようかと思ったら、すでに来ていた初華さんと目が合ってしまった。


「海斗くん、おはようございます」

「おはようございます」


 離れるのも変なので、挨拶を返して二人で星那さんを待つ。


「晴れてよかったですね」

「そうですね」

「海斗くんは体調とか大丈夫ですか?」

「大丈夫です。初華さんは大丈夫ですか?」

「はい! 元気いっぱいです。頑張って投げます!」

「僕も頑張ります。怪我しないように」

「そうですね。怪我をしてもう遊びたくないと思われたら悲しいですから」

「そんなことないですけど」

「わかりませんよ」

「はよ! 二人ともはやいねー!」


 星那さんが走って向かってきた。


「まだ時間になってないから急がなくていいのに」

「だって二人で仲良くしてたしー。仲間外れはよくなくなーい? なくなくなくなーい?」

「どっちですか」

「まあ、いいやー。ほら、いこー!」


 腕を組まれた。


「星那さん!?」

「えへへ、連行ー!」

「別に逃げませんから離してください!」

「走って疲れたから杖代わりー」

「海斗くんに迷惑かけない」

「初華もすればー?」

「……ふむ」

「初華さん!?」

「冗談です。ほら、星那も自分で立つ」

「はいはーい。じゃ、いこー!」

「あの、手も離してください……」



\\\



「カイト、どれにするー?」

「どれがいいんでしょう?」

「これはー? 私と一緒!」

「えっと……少し小さいかも……?」

「んー? カイト」

「なんですか?」


 星那さんは俺の手首をつかむと手のひら同士を合わせた。


「お! カイトの方がおっきいんだー!」


 合わさった手から熱と柔らかい感触が伝わってくる。


「じゃあ、もっとおっきいのがいいのかー。これはー?」

「これは……うん。ちょうどいいかもしれないです」

「やった! じゃ、いこ! 初華待ってるしー」


 二人でボールを持っていくと、初華さんは既に座っていた。


「ごめんなさい、待たせちゃって」

「いいんですよ、サイズあってないと危なかったりするかもしれませんし」

「あ!」


 座ったと思ったらすぐに星那さんが立ち上がった。


「どうしたの?」

「飲み物! もってきたほうがいいよねー! 私買ってくるー!」

「俺も行きますよ」

「いいよー。3人分だけだしー。私投げるの3番目だし、始めてて! 何にするー?」

「なら、スポーツドリンクで」

「俺は……お茶で」

「りょーかい! 行ってくるー」


 星那さんが自動販売機の方に向かっていった。


「じゃあ、私達は始めましょうか」

「そうですね」


 一番最初は初華さん。そういえばスカートでいいのかな?

 初華さんの手から離れた黄緑色のボールは、真っすぐ中心を転がっていき、全てのピンを倒す。


「やりました! ストライクです!」

「すごいですね!」

「ハイタッチください」


 ぱちんと音。でも、手が離れなかった。


「……あの? ちょっと!?」


 指が絡んできた。


「えへ」

「あー! 二人でイチャイチャしてるしー!」


 星那さんが飲み物を持って戻ってきた。


「カイトー」

「何でもないです」

「飲み物ありがとう」

「ってストライク取ってるー! ないすー!」


 初華さんと星那さんがハイタッチしている。


「次はカイトだねー! がんばれー!」

「海斗くん、頑張ってください!」

「ありがとうございます」


 おぼろげな記憶を頼りに、俺はボールを投げた。

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