魔王軍の進軍!

シオン達が南の祠に向かっている頃─


「まずいわね。予想より早いわ」


賢者アイラが鳥系の使い魔を飛ばして魔王軍の動向を探っていた。


「すでに住民の避難は終わっておる。ここに居るのは老い先短い老人ばかりじゃ。それより魔王軍の軍勢はどのような構成じゃ?」


アイラの隣で村長が尋ねた。


「獣系統の魔物がほとんどですわ。ウルフ系を先頭に、鎧をきた獣人族にミノタウロス、など体格の大きい魔物が続いています」


村長は顎に伸びた髭を触りながら言った。


「ならば魔王軍4師団の内の3番目である『百獣王軍』が来たのじゃな」


魔王軍は直属の4魔将軍がいて、それぞれ配下の師団を与えられている。


「………強靭な身体能力を持つ4魔将軍が1人、ライオンの獣人キングレオが率いているのね」


まだ使い魔から姿は確認されていないが、百獣王軍であれば間違いないだろう。


「じゃが、相手が百獣王軍であればメリットとデメリットが出てくるのぅ?」

「そうですね。鼻の効く獣系だと迷いの森の結界は余り効果がないですね」


全く効かない訳ではないが、何十、何百もの獣が入り込んだら突破されるのは時間の問題だ。


「メリットは獣人族は魔法が苦手という事じゃ。幸いワシらは体力的に魔法が主体で戦う事になる。魔法耐性の低い獣人には最適じゃ」


村長はアイラを安心させる為に言ったが、アイラには分かっていた。魔法使いを守るタンク役が居なければ一撃放った後、すぐに蹂躙されることを。だが、アイラはそんな事を顔に出さずに答えた。


「ええ、その通りです。極大魔法で一網打尽にしてやりましょう!」


そう、ここに残った者はすでに死を覚悟している者なのだ。一匹でも多くの魔王軍を倒す事を決めている者に同情は侮辱に当たるので、アイラも強い覚悟で挑むのであった。


「報告致します!『情報』通り、迷いの結界を発見しました!」


斥候部隊が戻り前線の上官に報告してきた。


「よし、シルバーウルフ隊を迷いの結界に突撃させろ!」

「宜しいのですか?何か対策がありませんと突破できませんが…………」


報告にきた伝令が困惑していると、上官が説明した。


「予定通りだ。確かに方向感覚を奪う結界は厄介ではあるが、多くのシルバーウルフを突撃させれば、仲間の位置が匂いでわかる。仲間の位置を把握しながら進めば迷いの結界は突破できる!」


「な、なるほど!」


伝令はすぐに戻っていった。


『まぁ、罠があった場合は補充のしやすい部隊でもあるのだがな』


今回は第三師団である百獣王軍の総出で進軍しているのだ。失敗は許されない。


魔王軍も憎き勇者の末裔を滅ぼさんとやる気に満ちていた。


「よし!もうすぐたどり着くぞ!お前達、勇者の末裔を殺し尽くせ!!!」


オオオッッッッ!!!!!!!!


海から上陸し完全な奇襲であったが、賢者アイラの使い魔でその上陸が知られており、大多数が避難した事を魔王軍は知らなかった。

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