ヨルノモノガタリ

この何処までも安らかに昏い闇は

わたしをなかなか眠らせてくれない

優しく懐かしいほどに

全ては還らないことを思い出させて


寝返りを何度も打ちながら

消灯時間過ぎ枕元の常夜灯で

「歪み真珠」の頁を捲りながら

文字を食べるように読んでいる


イヤホンから聴こえる音楽は

Coccoの「あなたへの月」

遠くで月が泣いていると

繰り返し叫んでいる



病室の夜はわたしに

色々なことを思い出させてしまうから



何処か歪で美しい物語に溺れて

その文字を食べ尽くそうとしながら

わたしは泣く月の歌をイヤホンで

エンドレスで聴いている


大人の一人の夜は怖くはないけど

わたしの中の独りになった少女が

瞳の中に三日月を浮かべて

想い出の海で遭難しそうだから



助けに行かなきゃ


ちぎれてしまいそうな月を

抱きしめに行かなくちゃ


呼ばれているから

助けに行かなきゃいけないの


ヨルノモノガタリの中の


わたしを。

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