エスケープ

紅茶の入ったマグカップを横に置いて

本を読む

選んだのは分厚い推理小説ミステリィ

ひたすら没頭できるように

迷路ものがたりは長い方がいい

しばらく世界を彷徨さまよえるように


真正面から向き合ってばかりだと

心が保てなくなるから

そんな時にはエスケープ

逃げることも悪いばかりじゃない

どうせ向き合うことになるのだから

それまでに力を蓄えて


生きていくための

自分なりの知恵と

世間よのなかとの折り合い

昔よりも少しばかり

逞しくなったわたしは

エスケープの呪文を唱える


この長い推理小説ものがたりを解き終えたら


大きく伸びをしたあとで


また、ゆっくりと歩いていこう

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