60. 権力争い

「わかったか?」

「あぁ。マリーを執拗に攻撃していたのは、大半が親が第二王子派の者だ」


 アレクとアスタで魔術大会中にローズマリーを集中的に攻撃してきた面々をざっとノートに書きだす。

 それを見てレイモンドが確信したかのように頷く。

 やはり噂の本当の狙いはローズマリーではなくレイモンドのほうだったのだ。


「でも第二王子はまだ幼ないよな」

「別に王子が指示したわけじゃないだろう」


 年端も行かない子がそんな企てをするはずはない。しかし


「幼くても王位継承資格者だ。そしてその幼い王子を王座につかそうと今から画策する連中がいてもおかしな話ではないだろ」


 今の王妃様には子供がいない。そしてレイモンドも第二王子も側室の子だ。そして身分的には第二王子の母親の方が高いのだ、だからこのまま成長すれば第一王子を差し置いて王位継承する可能性は決してないとはいえない。


「レイモンドと公爵家の一人娘であるローズマリーの結婚が決まれば、その後ろ盾の強さや年齢的なものも含めてレイモンドが王位を継ぐことはほぼ決定するだろう」


 そうなる前に、第二王子派はこの婚約をないものとしたいはずだ。そのために狙われたのは、王子であるレイモンドでなくローズマリーのほうだったのだ。


「たぶん、いままでのマリーの言動を知ってる者からすれば、陥れるにはマリーのほうが簡単だと踏んだのだろう」

「でも、ことのほかマリー嬢の学園での支持者は多く嫌われてもいなかった」


 第二王子派は自分の子供たちを使い根も葉もない噂を流したのだろう。いくら学園でのローズマリーを知っていても、あれは偽りだと親に言われたら、子供は親の言葉を信じるだろうから。


「確かに親の言うことは絶対かもしれないが、あそこまで露骨に憎悪するか?」


 確かにあのローズマリーを攻撃してきた生徒たちの異常なまでの執拗さ、そして外部からきたはずの大人たちまでもが、初めから悪意を持ってローズマリーを見ていた。あれは──

 噂を流していた者たちはわかったが、どう対応するかはまた考えなくてはならないようだった。


 そうして、波乱に満ちた学術祭は幕を閉じた。

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