⑬ エピローグ

 わたしのマンションで、ルパン事件解決パーティーを、わたしたちは開いていた。

 星崎さんが出してくれたマロンクリームパフェでとマロンティー乾杯だ。

「いや~、めでたいねぇ、無事解決」

「ももぽんったら、調子いいんだから。今回の事件ではいちばんメンタルやられてたくせに」


「『夢は、あの子はこころがじょうぶじゃないんだよ!』『マーティンがいなくなったら、あたし……』」

「せいら、かわからないでよ!」

 ……。

 心配してくれてたんだね。

「ねぇ、ももちゃん」

「え?」

 だいじな友達だからこそ、じつは気になっていることがあった。

 斜め前に座って、さっきから黙って抹茶クリームをストローですすってる、アールグレイの髪と瞳の彼のことなんだ。

「事件が解決してから、マーティンずっと赤くなってふさいでるの。ももちゃんとなんかあったの?」

「ぎょぉっ、それは……その」

「あー、なに? チーム文学乙女のあいだで隠し事はなしよ!」

「せ、せいら。うん、そだね。実は報告があって」

「なになにー!?」

「あらたまって怖いわね」

「じつはあたし、人生ではじめて……」

「やだっ、ももぽんの不潔!」

「えーっ、ももちゃん、おめでとう!」

「まだなにも言ってないっちゅーねん!!」

 そこへ、星崎さんが、おかわりの紅茶を持ってきてくれて。

「二人とも、今回のことは、ほんとにありがとう」

 ももちゃんとせいらちゃんをみつめてしみじみという。

 うん。

「わたしからも、ありがとう」

 星崎さんを無実にする証拠集めてきちゃうなんて、やっぱりわたしの友達はすごい。

「てへへ。そんな、とーぜんのことだよ」

「そうよ。ダチとその想い人を助けるってのは、文学乙女の超基礎ルールだもの」

「ももちゃんとせいらちゃんには、今度なにかとびきりのものごちそうしないとね」

「えーっ、じゃぁあたしクリームパスタと、あとはクリームの……スープがいい……です」

「あれももちゃん。なんでそこ赤くなるの?」

「あーもう、ほっといとくれー!」

「いいわよねいいわよね。あたしなんか今回、ラブシーンほぼなし……」

「オレなんか本編にほぼ登場してないんだぜ。まじ勘弁……」

「あぁかみやん、今日は哀愁に浸りましょう」

 夜のとばりが降りた栞町

 窓のカーテンの奥には銀色の月が映っている。

 この夜空の彼方、ルパンさんはまた、活躍してるかな。

 スプーンですくったマロンクリームを口に含みながら、わたしはそんなことを思った。

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