第134話 日本を批判できればなんでもいい国

キャラ振り返り11 坂東亮悟(ばんどうりょうご)

 最初の敵キャラ。

 ハニー君とは小学校一年生時代から10年連続同じクラスでいつもハニー君をいじめ続けていた。

 氷を作り出す能力【アイスキネシス】の使い手で戦闘力はそれなりに高い。

 わかりやすいジャイアニズムの塊だったが、桐葉にはまるで敵わずボロ負け。

 ハニー君には二回も下水道シュートを喰らい、最後は自販機落としで潰された。

 下水道シュートを最初に喰らったパイオニアである。

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 翌日の昼過ぎ。


 総務省での仕事を終えた俺らは、早百合次官を含めた9人でリビングに集まっていた。

 最近、俺と桐葉の部屋が会議室になっている気がするのは気のせいだろうか。


「では6G対応のデバイスの製造と配布のため、試合は夏休み最終日とする。時間帯はより多くの人が観戦できるよう、昼から夜まで。休憩30分を挟んだ前半戦後半戦の一時間半ずつの計3時間30分とする。だが廃絶主義者たちの動向が気になる。真理愛」

「はい」


 まるで早百合次官の秘書のように、真理愛は9枚のMR画面に資料映像を念写した。


「廃絶主義者による反対運動は激化の一途をたどっています。デモ行進、街頭演説、電子書籍の出版、ネットへの書き込み、批判動画の投稿。一般人が打てる手は全て打っていると言ってよいでしょう」


「内容は?」


「アビリティリーグは危険。能力者は危険な犯罪者予備軍。政府は経済再生プロジェクトで国民の目を誤魔化しているが本当は超能力部隊を作って軍国主義に舵を切って世界征服を企んでいる。日本の経済破綻も、このための自作自演に違いない」


「影響力は?」

「残念ながら、一定の効果を収めています」


 普段は無感動な声をわずかに硬くさせながら、真理愛は画面に棒グラフを表示させた。


「今はまだ陰謀論やノイジーマイノリティとして扱われています。しかし、関連動画の再生回数や評価、電子書籍の売れ行き、イベントの参加者などを比較すると、確実に上がっています」


 苦々しい顔をしながら、早百合次官はため息を吐いた。


「やれやれ。世の中には裏取りもせず話題の思想に飛びつく輩が多いからな」

「育雄! そいつらを片っ端からアポートするのよ! あたしがヒーリングフィストをお見舞いしてやるわ!」


 眉間にしわを寄せた茉美が、怒りをあらわにテーブルを殴った。


「あたしらが危険だって言うならお望み通りにしてやるわよ!」

「それで茉美にヘイトが向いたら困るだろ?」

「何が困るのよ? あたしに向かって来たら全員返り討ちにしてやるわ!」


 興奮の収まらない茉美は、闘牛の牛のように息を荒らげている。


 ――仲間のために怒れるのは茉美の美徳だけど、欠点でもあるよな。


「いくらお前が強くても多勢に無勢で袋叩きにあったらどうするんだよ。それにお前は可愛いんだから、男たちに襲われたら、心の傷はヒーリングでも治らないぞ。気持ちはわかるけどおとなしくしろ」


 なだめるように言って、彼女の拳をつかんで膝の上に下ろさせた。

 すると、茉美は、妙におとなしくなってうつむき、視線を逸らした。


 ――おいやめろ、可愛い反応をするな。好きになっちゃうだろ。


 茉美がおとなしくなると、真理愛は説明を再開させた。


「また、オリエンタルユニオン、通称OUの息がかかった団体、そのほか、反日団体も廃絶主義者たちと合流して、勢力を伸ばしています」


「ほえ? でもマリアちゃん、OUにも超能力者はいますよね?」


「はい。なのでOU系団体と反日団体は、超能力者への批判はしていません。アビリティリーグへの批判と、日本政府が軍国主義に傾いているという陰謀論の糾弾が主なようです」


「OUってもう日本を批判できればなんでもよくなっていないっすか……?」

「言うなよ、前々からこんな感じだろ……?」


 俺と詩冴は同時にげんなりと眉を落とした。


 ちなみに、麻弥は今日も早百合次官に膝枕で甘えていた。


 早百合次官の南半球様がお気に入りなのか、とってもご機嫌だ。


 今日も沖縄で赤毛の子から貰ったと言う古銭を髪飾りにしている。窓から差し込む太陽光を反射したのか、一瞬、光った気がする。


 すると、不意に早百合次官が顔色を変えた。


「む、着信か。私だ、どうした? ………………廃絶主義者たちから討論番組の依頼だと? ふむ、ふむ、わかった。検討しよう」


 頭痛を抑えるように、頭に手を当てながら、早百合次官は硬く目を閉じた。


「まったく、度し難い連中だ。どこまで他人の足を引っ張れば気が済むのだ」


 膝の上から立ち上がった麻弥は、早百合次官の頭をぎゅっと抱きしめた。


「早百合ちゃんかわいそうなのです」


 すると、何故か早百合次官はさらに苦しげな顔をした。


「くっ、戦士の私が蝕まれる……」


 どうやら麻弥にバブみを感じているらしい。


 ―—麻弥、恐ろしい子。


 と、俺が名作の名シーンを頭の中で再現していると、桐葉は無関心にソファへ体重を預けた。

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 本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。

 みなさんのおかげで

 フォロワー11877人 324万3271PV ♥48001 ★5860

 達成です。重ねてありがとうございます。

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