第98話 毒親スレイヤー
●キャラ振り返り 奥井育雄(おくいいくお)
本作の主人公。
幼い頃から坂東亮悟にイジメられていたボッチの少年。
本人はソロ充だと思っていたが中学三年の頃に、クラスメイトに罠にハメられ、自身がボッチだと気づく。
が、舞恋の手で自身が超能力者であることがわかり、政府のプロジェクトに呼ばれる。
戦闘系能力者の坂東亮悟はプロジェクトから外される一方で、育雄のテレポート能力は重宝され、ヒロインたちと出会い、仲良くなり、リア充になる。
・困っている人がいると助けてあげたくなる優しさ。
・悪人を見ると怒りを覚える正義感。
・巨乳に視線を奪われる、おっぱい国民力。
を兼ね備えた主人公。
恋人の桐葉からハニーと呼ばれるせいで、ハニーがあだ名になる。
また、日々、女性陣に握られる弱味が増え続けている。
【地球中心天動説】をもじって、自己中な人を【自分中心他動説】と呼ぶ。
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うちの洗面台で真理愛の顔を洗ってから、俺らは有馬家のリビングにテレポートした。
突然現れた俺らの姿に、真理愛の母親は軽く悲鳴を上げて驚いた。
――うん、まぁそうなるよな。
けど、俺は遠慮なんてしない。
「夜分にどうもこんばんは。実はさきほどお宅の真理愛さんと相談しまして、本人の強い希望で彼女は官僚の官舎に引っ越すことになりました。総務省異能局局長、龍崎早百合さんの許可は貰っています。では引っ越し作業を始めますね」
怒涛のまくしたてに、母親は呆気に取られるも、すぐに正気を取り戻した。
「ま、待ちなさい! 何を勝手なことを! 私はそんなこと許しませんよ! お父様だって許すはずありません!」
その問いには、真理愛は淡々と答えた。
「お母様。私はすでに義務教育を終えていますので、自らの意思で家を出ることができます」
「そんなわけがないでしょう! 義務教育を終えていても、未成年なら親の許可がないと生活できないはずです!」
激昂する母親に、桐葉はしれっと答えた。
「あー、それって賃貸契約と雇用契約の保証人の話でしょ? 住む場所は官僚用の官舎、学校は異能学園、勤め先は総務省異能局、どれも親の保証人はいらないよ。おばさん、意外と疎いね」
「え……」
母親が間抜け面を晒している間に、俺は真理愛へ引っ越し作業を促した。
「そんじゃま、引っ越し作業始めますか。真理愛」
「はい。これが、リビングやキッチン、お風呂場などの共有スペースに保管している私の私物一覧です」
真理愛が展開したMR画面に、何枚もの画像が表示された。
その画像と保管場所を頭に入れながら、俺はテレポートを発動させた。
「よし、あとは真理愛の部屋だな」
「こちらです」
真理愛が自分の部屋へと踵を返すと、母親が五メートル走選手のような勢いで、廊下への入り口に立ちふさがった。
「真理愛! お母様に何の話もせずに何を勝手なことを決めているの! その二人に何を言われたか知らないけど、今まで育ててやったお母様よりも他人を優先するの!? これだから娘は! こんなことなら息子を産むんだったよ!」
毒親発言のロイヤルストレートフラッシュに、怒りを通り越して哀れに見えてきた。
神様は、どうしてこいつをこんな低能に作ったのだろうか。
「悪いけどオバサン、夕方に一回話したし引っ越しに親の許可はいらない。
親の都合で産んだ子供を育てるのは当然のこと。
他人を優先するのはあんたが他人以下の毒親だから。
娘だからってのは男女差別。
産んだことの否定はモラハラ。
毒親ジャックポッドであんたはゲームオーバーだ」
人生初のドヤ顔を作ってから、俺は三人で真理愛の部屋にテレポートした。
真理愛の部屋にテレポートすると、廊下の奥から騒がしい足音がして、乱暴にドアが開いた。
顔を真っ赤にして息を荒げる母親に、俺はひらひらと手を振った。
「じゃあな。真理愛の父さんによろしく」
「お母様……またいつか、お会いしましょう」
母親が何か言う前に、俺は部屋のものごとマンションへとテレポートした。
母親と部屋の壁が消えて、代わりに美稲とマンションの壁が現れた。
「おかえりなさい。その様子だと、上手くいったみたいね」
「ああ。じゃあ美稲、頼めるか?」
「任せて」
好意的に頷いてから、美稲は真理愛の手を引いて、無人のリビングへ向かった。
この部屋は、俺と桐葉の部屋の東隣にあたる空室だ。
リビングには備え付けの家具しかなく、生活感はない。
「入り口はここでいい?」
部屋の西側、つまりは、俺と桐葉の部屋側の壁に触れる美稲。
「おう、やっちゃってくれ」
「えい」
美稲の声を合図に、壁がスパークした。
壁は液体のように形を変え、俺と桐葉の部屋へ繋がる通り道ができた。
真理愛はハッとしてから、心の底から嬉しそうに、口を結んでくれた。
まるで、彼女に買ってあげたクリスマスプレゼントを喜んでもらえた気分だ。
「はい、これでOKだね」
「ありがとうな美稲」
「これくらい、お安い御用だよ」
珍しく、美稲はちょっと得意げに胸を張った。
美稲もちょっとずつ変わってきたなぁ、と成長を感じた。
「じゃあ真理愛、これからよろしくな」
「ハニーさん!」
俺が振り返ると、間髪を入れずに真理愛が飛びかかってきた。
勢いをそのままに真理愛は俺の唇にキスをしてきた。
両腕で俺の体を力いっぱいに抱き寄せて、いつまでも、激しく俺を求め続けた。
真理愛の愛に応えるように、俺も彼女の細い体を抱きしめた。
真理愛は、さっき抱き着いてきたときと同じように、15年間の孤独を埋めるように、俺のくちびると舌を求めてきた。
ちょっとえっち過ぎる気もするけど、好きな女の子に求められるのは悪くない。
だから、俺も真理愛の気持ちに応えて、彼女を甘えさせた。
真理愛の熱く濡れた舌が、俺の舌にからまり、はぐきをなぞっていく興奮で脳の奥が過熱されていく感覚に、幸せな気持ちが止まらなかった。
「あむ、はむ、ハニーさん、ハニーさん、ハニーさん」
「あの、ちょっ、真理愛さん? 長く、ないですか、ね?」
けれど、真理愛はおかまいなしに、いつまでも俺を求めてきた。
さっきから、真理愛と密着して、真理愛の香りに包まれているせいか、初々しくて甘酸っぱい興奮が、徐々に男性ホルモンに由来する邪心へと変化している。
そろそろやめないと、色々とマズイことになりそうだ。
「真理愛、そろそろ、うおっ!?」
意外な剛力を発揮して、真理愛は俺を床に押し倒すと、そのまま、全身で俺の体をむさぼるように抱きしめてきた。
「ハァ ハァ ハニーさん、大好きです」
――うぉおおお! 駄目だぁ! 邪心がどんどん下半身に溜まってきて、このままでは文明人の矜持を失ってしまう! 健全な人の道から外れてしまう!
桐葉や美稲のせいで、真理愛は自虐的に自身を卑下するけれど、真理愛のDカップが思う存分にその性能を発揮している。
――ぐぅっ! 桐葉、美稲、早く助けてくれ!
が、美稲は恐ろしいほど澄ました顔で、頭上に撮影中のRECマークを浮かべていた。
――RECしちゃらめぇえええええ!
俺のピュアな悲鳴は、誰にも届かなかった。そして桐葉は脱ぎ始めていた。
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本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。
みなさんのおかげで
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達成です。重ねてありがとうございます。
書籍版はスニーカー文庫より★2022年3月1日発売です。★
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