自殺系サイト

大城時風

プロローグ

【自殺】

 自分で自分の命を絶つこと。自害。自決。


【他殺】

 他人に殺されること。


【殺人】

 人を殺すこと。








手入れが施されずに痛んだボサボサの髪。

華奢な身体に似つかわしくない青い痣。

年頃の少女とは思えない、目の下にあるクマ。

どこか諦めてしまったような、希望を捨てた目。

少女は暗い部屋で独り、パソコンと向き合っていた。


"生きていて何の意味がある"


いつだったか、少女は自身の担任を務める教師にそう質問したことがあった。


「んー。そうねえ。幸せになるために人は生きているのかもね」


女教師は笑いながらそう言った。

それは女教師自身が今の生活に満足して十分に幸せを感じていたからこそ出た言葉に違いなかった。


(私のことも知らずに…)


少女は下唇を噛み締める。

「死にたい」と思い始めたのは"虐待"が始まってから。

「死のう」と思い始めたのは"いじめ"が始まってから。

しかし、少女はたった一人で命を絶てるほど強くはなかった。

なので、一緒に"逝ってくれる"同行者がほしかったのだ。

そんなときに少女が見つけたのは【自殺系サイト】だった。

真っ黒な背景に白い文字のそれは、いかにもな雰囲気を漂わせているサイトだった。


(ここなら、一緒に死んでくれる人が見つかるかもしれない)


そう考えた少女は早速、そのサイトの掲示板に書き込みをした。

"私は生きることに疲れました。誰か、一緒に逝ってくれる方がいたら嬉しいです"と。

少女の書き込みには、すぐさま様々なコメントが寄せられた。


"一人で氏ね"

"勝手に逝けよ"


そんなコメントの中にたった一つだけ、少女が望んでいたものがあった。


"一緒に逝きませんか?"


ああ、これでやっと。そう思った少女だったが念のために相手の年齢を確認したところ、何と相手は少女よりも三歳も年下の中学三年生であった。

しかし、それでも少女は同行者がほしかった。

中学生の子供であろうとも、自分と同じく死にたいと思っている。

自分と同類の人間なのだ。

そう思えば不思議と戸惑いはなかった。

二人は個人間で連絡のやり取りをするまでの仲になり、そして会う約束をした。


二人で死ぬために。

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