13
「一緒に食べます?」
「えっ?」
私が聞き返すのと同時にカツ丼特盛弁当が二つできあがり、目の前にドンと袋が置かれた。
大野くんはそれを持つと私の背を押す。
「さ、かえりましょー。」
「待って、お金。」
「奢りますよ。」
「いやいや、ダメだよ。」
押し問答をしながらお店を出ると、大野くんは私を歩道の内側に寄せてアパートへ向かって歩き出す。袋も持とうとしたけど譲ってくれない。
「一緒に食べてくれたらお金もらいますよ。」
「そんな。じゃあ奢ってもらおうかな。」
売り言葉に買い言葉、ではないけれど、変な対抗心で私は意地をはって言い返した。すると大野くんはピタッと止まって私を見据える。
「そんなに俺と食べるの嫌?彼氏に怒られる?」
何だか怒っているように感じて私は口をつぐむ。それに、彼氏に怒られるだなんて、彼氏なんていないのにどう返したらいいんだろう。
「本当は彼氏いないんでしょ?」
ぐるぐると葛藤する私に追い打ちをかけるように、大野くんはあっけらかんと言い放った。
彼氏がいないこと、大野くんは気づいていたんだ?!
動揺が身体中に広がりみるみるうちに顔が赤くなる。そんな私を見て、大野くんはクスリと笑った。
「姫乃さんって真面目。」
「か、からかわないでっ。」
あんなに、彼氏はいないと間違いを正したかったのに、いざ他人から言われると恥ずかしさや情けなさが込み上げてきて、思わず涙目になってしまった。それを見た大野くんは少しばつが悪そうに眉を下げた。
「すみません、意地悪言って。姫乃さん可愛いから。じゃあ、大人しく帰ります。」
しゅんとする仕草になぜだかこちらが申し訳ない気持ちになってしまい、どうしたものかと悩んだ。
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