第48話 事象の地平線
私だ。
私が創造した世界だ。
あまり小難しく考える必要はない。
時間の無駄である。
簡単に説明しよう。
事象の地平線が存在するのは、ブラックホールではない。
この世界の、天と地の狭間にそれはあって、明確な場所も特定できる。
ハワイ諸島、オアフ島より西38、5キロの場所に「天国への階段」と、呼ばれる岩礁がある。
日没前の数分間、事象の扉(正式には地獄門と名付けられた岩に出来た空洞、1941年12月7日、日本海軍零戦パイロット、西園徳光飛曹長が命名し、その後自決を図る)が、海面に姿を表すのだが、空洞こそがブラックホールであり、強制的に位置をずらし、月光をホールに通過させるとこの世界も、1京7950兆存在するといわれる平行世界もリセットされるのだ。
私が何故それを知り得ているのか、それは私がプログラムしたからだ。
よって、アヤメはもちろん、フロイトの過去もよく知っている。
もっと解りやすく言えば、人間とはGAMEの中のキャラクターだ。
プレイヤーは外にいて、其々のアバター(人間)を見ている。
若しくは放置している。
動物系生命体の数だけプレイヤーもいて、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、淡水魚類、昆虫類、貝類、クモ・甲殻類がそれに当たるが、植物系は此れに含まれない。尚、ウイルスとは、プレイヤー外宙世界から、現世界を破滅させるために創られた。感染先のアバターの一部のプログラムを書き換えて、自分のコピーを生産し、多様な感染ルートを辿ってGAMEを強制終了させようとする。
終了とはアバターの絶滅であって、その目的は人工知能を組み込まれた存在の否定であるとされるが、実のところ私にだって分からない。
外宙世界の使者とは、謎の領域であり、絶対領域であり、神なのかもしれないと、無神論者の私は日々嘲笑っているのだが、どうだろう?
俗物たる者達は、生命には意味があると考えがちだが大きな誤りだ。
産まれる前から、個々にプレイヤーが存在し、プログラミングされた生涯を進む。過去も現在も未来も、普遍的価値を変えることは出来ない。
だが、必ず「死」は訪れるが、アバター達は幾千万もの再生と消滅を繰り返し、組み込まれた生涯を辿る。
カシイアヤメにしてもそうだ。
彼自身は、鮫島結城が創り出した人格ではあるが、アヤメもまた、フロイトなる人格を創り出してしまった。
前回のアヤメの終わりは、世界の終わりである。
覚えているか?
進化論と創造論、どちらが真理だと思う?
カシイアヤメ・・・。
お前も死にたがりの出来損ないと、そう変わらぬものだよ。
ばぁーか!
GAME OVER
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