第4話 学校

 翌日、この日は黒島の学校の登校日である。

 ある年を境に学校にて対面授業と自宅授業の両立がされるように、文科省から指示があったと黒島は学んでいる。

 そんな学校は、最近は避難場所として活用されることが政府から通達されている。


「実際あんな爆弾が降ってきたらどうしようもないでしょ……」


 黒島が言っているのは、カイロに落とされた質量爆弾のことである。

 現状、流浪の民が地上に対して使用してきている唯一の攻撃手段だ。


「それってなんのことですか?」


 黒島の言葉を聞き返すように、レイズがスマホの音声機能を使って話しかけてくる。


「ちょっと!外では話さないようにっていったでしょ!」


 黒島は機転を利かせて、まるで電話をしているフリをする。


「そんなこと言わなくてもいいじゃないですかぁ。せっかくの地球なんですし、いろんなもの見たいです」

「あのですねぇ、俺は一人の学生でして、学生の本分は学業なんですよ?」

「そんなこと言ってると、祐樹さんの身の周りで不思議なこと起こしちゃいますよ」

「不思議なことって?」

「突然スマホが乗っ取られるとか」

「いや、うち私立だからスマホの類いは電源切るように言われているんですよ」

「とか言って、本当はつけっぱなしとかあるんでしょ?」

「言いたいことは分かりますけど……。とにかく、学校にいる間は静かにしていてください。電源も切りますからね」

「はーい」


 信用ならないな、と黒島は思った。

 その後、黒島は学校に向かう。

 道中は自転車を使っての登校であるため、悲しいながら一人で学校に向かうのだった。

 学校に到着すると、友人たちと遭遇する。

 黒島の学校は、街中にある普通の私立高校だ。

 ほかの私立高校とは異なるのは、通常の私立高校よりも規則が若干緩いことだろう。

 そんな学校生活では、友人たちと楽しく生活していた。

 そんな時である。

 黒島は普通に授業を受けていた。

 その時、黒島の鞄から一瞬バイブレーションが鳴り響く。

 その音に、黒島は心臓が飛び出そうになった。


(なんで!?スマホの電源は切ったはず!)


 直後、もう一度バイブレーションがなる。

 一瞬、授業の担当をしている先生が反応する。が、気に留めることなく続けて授業をする。

 黒島はたまらず、スマホを隠し持って、トイレへと駆け込む。


「ちょっと!何勝手に電源つけてるんですか!」


 黒島は小声で怒る。

 黒島は原因がレイズにあると決めつけていた。


「なんで私が怒られているんですか!」

「当たり前でしょ!」

「そんなことは置いといて、緊急事態です」

「何か?」

「また白の艦艇に見つかりました。今は自立モードで対応中です」

「……それって俺が行かないといけないパターンですか?」

「そうです。そうでないと、お互い手の内が分かっているので、対応ができないんです」

「……はぁー、しょうがないなぁ。授業が終わるまでですよ」

「はいっ」


 そういって、黒島は紅の旗艦へとテレポートする。

 テレポートした瞬間、艦自体が大きく揺れる。


「な、なんだ!?」

「思った以上に艦にダメージが入っているようですね。これはちょっとした痛手ですね」


 レイズが現状の報告をする。

 黒島は急いでバンドを頭に装着する。

 すると、頭の中にダメージを知らせるエラー音が鳴り響く。

 黒島がダメージを確認する。

 艦首のビーム砲と艦の外周に張り巡らせている主砲のいくつかが損傷していて使えない。


「なんでこうなるまで放っておいたんですか!」

「祐樹さんが来なかったからでしょ!」


 レイズと言い合いをしながらも、黒島は亜空間にて戦闘を行う。

 主砲が損傷しているとは言っても、数門がやられているだけである。全体の数からしてみれば問題はない。

 しかし白の艦艇の数が以前に比べて多い。


「まずいですね……。これはこの場所がばれている可能性があります」

「この場所って?」

「亜空間のこと自体ですよ。亜空間が存在する座標が特定された可能性があります」

「どうにか移動することができないんですか?」

「空間を移動させるっていうのは意外と難しいことなんですよ」


 そういっている間にも、黒島は次第に追い詰められていく。


「まずいですよ!このままじゃ押し切られちゃいます!」

「むぅ、仕方ありませんね。こうなったら援軍を呼びましょう」

「援軍ですか?」

「はい、少々待っててくださいね」


 そういって、レイズは何か操作をしている。

 すると次の瞬間、黒島が見ている立体レーダーの隅のほうから、何かが急にあらわれてくる。


「な、なんだ?」

「援軍です。紅の旗艦の隷下に存在する紅の艦艇です」

「他の艦艇なんていたんですか?」

「もちろんです。紅の旗艦は別名攻撃の艦とも呼ばれている程、攻撃兵装が充実しているんです」

「それで、あの艦艇たちはどうするんですか?」

「私が操作してもいいですし、祐樹さんが直接指示をしてもいいです」

「なら陽動をお願いします」

「分かりました」


 そういって、紅の艦艇群は左右二手に分かれる。そのまま挟み込むように、紅の艦艇群は移動していく。

 白の艦艇群はそれに応じる形で、反撃に転ずる。

 その隙を、黒島は逃さなかった。


「ミサイル発射!」


 100を超えるミサイルが、白の艦艇を飲み込んでいく。

 そして、どうにか攻勢は成功したようで、白の艦艇を撃退する事に成功した。


「ふぅ、どうにかできましたね」

「そうですね。とりあえず、簡単に対策を講じておきます」

「……あっ、授業時間!」

「すぐ戻しますねー」


 そういって、黒島はトイレへと戻ってくる。

 時間を確認してみると、授業終了ギリギリであった。


「あとであいつにノート写させてもらおう……」


 そういって、授業終わりの鐘がなった。

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