破られる【暗黙の了解】

 駅近くの喫茶店。

 奥の窓際の席に座ってはならない。

 それは常連客たちの間で暗黙の了解になっている。

 その席に座るのは憧れの高嶺の花。客たちはただ遠巻きに見守る。

 ある日その席に若い男が。

「君を待ってたんだ」

 はにかんだ彼女と店の外へ。

 店を去り際、男は呆然と見送る客たちに不適の笑みを見せた。

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