絡炎の花─世界を巡る因果論─

与名城 優依

第1話 生まれ換わる日(1)

(序)

黑い牢獄の中で、私は生まれて来た。

善意の代償求めて砕けたココロ。

ヒビが入って崩れ去った関係。

嘆く艶の無いかすれた吐息の様な音で。

さあ今、踊り狂おう。

聴き慣れた御伽話の記憶が闇に堕ちる様に。


自分の罪に溺れ、堕ちて逝く。

それが人生と言うモノだ。

人が堕ちるのは閻魔が居る八大地獄か、釈迦が居る極楽浄土のただ2つ。

そんな物だとしても、人はそれを1つの「物語」だと考える。

主人公は自分で、登場人物は家族や友人そして愛する人さえも。

語り継ぐのは自分の子孫で、軈て忘れられる。

そんな儚い「人生」を人は大切にする。


では、「僕」の物語はどうだったのだろう。

「僕」には知りようがない。

知りたくても知ることが出来る方法がない。

貴方の物語はどうだろう。

これは平凡だった日常に、ある「異能」が入り交じり意味を産まれさせる物語……


僕、佐藤 優はこの世界に産まれ落ちて約16年経つが「興奮」する事が無かった。

否、正しくは興奮に至る事が無い。だろう。

周りの友人が楽しんでる娯楽にさえ同調して、高揚する事すら無かった。しかしこれは昨日までの話だ。

こんな僕でも興奮するモノは有ったのだ。

それはいつも通りに友人と学校帰りにコンビニ前で駄弁っていた時だった。

友人がトイレに行って1人になった。この空白になった時間に、ある「異変」が起こった。

謎の光が夕陽より強く、流星群より速く瞬いた。

光は、瞬く間に僕だけを包み込んだ。

僕は咄嗟に腕で目を覆った。

光に包まれた僕はある声を聴いた。

(ーさぁ、今こそ目覚める時よ……)

光が自分を飲み込んだと感じてすぐに、その声の主が目の前に現れた。

「ー初めまして、神です。」

「……はい?」

見覚えのない女性が、頓狂な事を口走っている。

優は現状を確かめる為に女性に問う。

「えっと、もう一度聞きます。何かの聞き間違いであって欲しいんですけど、あなたは何者なんですか?」

「えー?やっぱ聞いちゃう?しょうがない。

今回だけよ?」

女性は分かっていたかの様な素振りを見せ、僕の要望に応えるがごとくもう一度言い放った。

「私は美しい美貌を持つ女神だぁー」

腕を組み、胸を張りながら女性は言い放った。

はぁ、僕の鼓膜がイカれていないという証明にはなった。

あと、さり気なく自分を誇示し始めた。

「で、自称女神(笑)様が何で一般人である僕をこんな名前も分からない場所に飛ばしてくれたんですか?僕、友達といい感じに話してた途中だったんですけど、どうしてくれるんですかね?」

女神は僕のこの言葉に返す。

「えっ、それはゴメンじゃん」

「だって、今すぐ君と話がしたかったから召喚したけど君がどんな状況かは知らないし…」

「ネットで、[魔術師 才能 先天性]って検索したら君の名前が一番上に上がってたからまさかとは思ったけど……思ってたのとなんか違う」

何かがプツンと切れた音を優は聞いた。

「ーゴメンじゃんで済むかボケが!」

………突っ込んでしまった。

「そんなんで済んだら警察も、検察も裁判所も必要ないんじゃアホ!」

息が荒くなったので深呼吸をして落ち着かせる。

そもそも、神様の世界にネットとかあったのか……

流石に言い過ぎたか?と考えた優。

冷静になった状態で女神(笑)の方に視線をやると。

………泣きそうになっていた。

「ウゥッ、だっで、じょゔがないじゃん!ウァァアアン‼︎‼︎」

泣いた。

まるで、駄々をこねる幼稚な子供に早変わりしている様だった。

……少し言い過ぎたか?

流石に知らない女性を泣かせた事は心に来る。

「すみません。流石に言い過ぎました。僕に出来ることがあれば言ってくれ何でもしますよ。もう、だから泣き止んでくださいって」

女神(笑)は、この言葉を待っていたかの様に泣き止み僕の手をひしっと掴み目をキラキラさせて言ってきた。

「今、「何でもする」って言ったよね?」

女神は続けて矢継ぎ早に行ってきた。

「今、世界は破滅に向かってるんだけど、本来こう言う事が起こると、[無空の彼方]が対応してるんだけど壊滅状態でそんな時にその[無空の彼方]に入れそうなあなたを見つけてここに連れて来たんだけど当たりも当たり!大当たり!だけどあなた自分の事で分かってない事がありそうだったからウンヌンカンヌン」

「うるせぇ!そんなに喋んな!理解出来ねぇ!省略しろバカ!」

そう優が言い放って数分後。

落ち着いた女神が、口を開く。

「つまり、あなたは世界を救う歯車の一枚だから[興奮]できない原因もそこにはある筈だから、ちょっと並行世界に行って頑張ってきて。」

「は?ちょっと待て?何故そうなった?」

しかもこの女、僕が気にしてる原因を知ってるだと?並行世界行って頑張ってきて?何言ってんだコイツ。

優がそう考えていると、女神が行動に移る。

「じゃ!頼んだよー!」

女神が指をパチンと鳴らすと優の周りに穴が空く。人間が重力に逆らう事も敵わないので優はそのままそのまま穴に落ちる。

「ふざけんな!僕は何でもするって言ってないぞー!」

その一言を言いながら、優の体は上空に放られた。

優が、穴から落ちて穴が閉じた時。

女神は呟いた。

「また会った時は、ホントの事を話すから……君の事も、そして、私の事も」

女神はそう言うと、風に姿を溶かして消えた。

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