ウサギ小屋のラプソディー

仙ユキスケ

第1話 ウサギ小屋当番の順番

 油蝉アブラゼミ鬱陶うっとうしい声が鳴り響く7月下旬。1学期の終業式を目前に控え、私達6年2組のクラスでは、夏休み期間中のウサギの世話について、くじ引きで順番決めをする事になった。


「クラスの皆さん、ウサギの世話は立派なお仕事です。手を抜かずにしっかりとやりましょう。日付のくじを引いたら、何日になったのか先生に登録して下さい」

 と先生が言ったのを皮切りに、くじが回覧され始めた。

 私、吉永よしながまゆかの順番になり、隣の席の山田里香やまだりかちゃんと一緒に小さな紙袋に入っているくじを引いた。


 くじを開いてみると私は8月5日だった。

「――ああ、私は8月7日だぁ……」愕然がくぜんと頭を抱える里香ちゃん。

「里香ちゃん、どうしたの?」

「私ね8月に入ったらすぐにお盆の頃まで、田舎のおじいちゃんの家に行くんだ。だから、ウサギ小屋の当番どうしようと思って……」

 里香ちゃんはすごく困った様子だ。

 私はというと、別に暇だしなぁ……、そうだ!

「私はどこにも行く予定ないし、代わりにやってあげるよ」

「えっ? ……いいの? まゆかちゃん、本当にいいの?」

「うん、大丈夫。私、ウサギ好きだしね」

「じゃあ、お礼にお土産買ってくるね。まゆかちゃん、ありがとう!」

 里香ちゃんは嬉しそうに小走りで、その事を先生に伝えに行った。


 終業式までには正式な当番表が配られるだろう。ウサギの世話や小屋の掃除は1人では大変なので、ペアを組んでやる事になっている。

 2回くらいウサギ小屋当番をやる事なんて、全然平気。

 それよりも夏休みがすごく楽しみ。朝寝坊できるし、毎日プールにも行こうっと。

 教室の窓から見えるウサギ小屋を尻目に、頭の中は、すっかりお花畑状態だった。


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