Day20 地球産

『地球産の宝石、その希少な輝きを貴方の元へ――』

 ジュエリーショップからのダイレクトメールをゴミ箱へ放り込み、やれやれと肩をすくめる。

「本物なら博物館行きだろうに」

 地球が凍結して幾星霜。氷河期到来前に持ち出された宝石類もあるにはあるが、それこそ値段などつけられるはずもない。

『地球産ダロウガ、合成宝石ダロウガ、硝子玉ダロウガ、綺麗ナラ何デモイイダロ! ドウセ見分ケナナンカツカネエンダカラ』

 身も蓋もないことを言ってのける鳥型AIの言葉に、それもそうだなと、苦笑いを一つ。

「そりゃそーだ。綺麗ならどこ産だろうが関係ねえな」

 地球産に価値を求めるのは、すでに時代遅れだ。今や宇宙のあちこちで鉱石が発掘される時代。地球上にはなかった未知の鉱石も山のように発見されている。

「地球産の宝石には興味ないが――『宝石のようだった』地球なら、この目で見てみたかったよなあ」

 生命力に満ち溢れた神秘の惑星ほし――。凍結した今の姿からは想像できないが、かつて母なる星は青く、見るものすべてを魅了する星だったという。

「淡く輝く青い星、か。いつかまた、見られる日が来るのかね」

『詩人メイタコトヲ言ッテネエデ、サッサトめーる整理ヲ終ワラセロ!』

 感慨に浸る間もなくAIに小突かれて、はいはいと作業に戻る。


 地球が色彩を取り戻す日は、明日か、それとも百年先か――そればかりは誰にも分からない。

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