「センパイ、女子ですね」
「クレープならこの前、えみと本屋さんに行ったらその前で店頭販売してましたよ!」
私がそう提案し、記念すべき初デート(以前、告白した翌日に部活内で使う画材を買いに行ったが、あれは使いパシリなのでノーカンだ)の場所は商店街となった。
そうと決まれば話は早い。私はセンパイと学校を出て本屋さんがある商店街へと向かう。
幸い、今日は猿投くんは来ていない(今来られたらセンパイと鉢合わせしてしまい、修羅場になってしまう可能性があったから本当に良かった)。
「車で販売しているクレープってなんだか特別美味しい気がします!」
「キッチンカー効果でしょうか? 生憎、僕はそういう所でもクレープを食べた事がないもので…」
「えっ、それじゃ普段はどこで食べているんですか?」
私がそう聞くとセンパイは「実は…」と少し眉をひそめながら続けた。
「僕、クレープを食べた事がないんです」
「え? なんて?」
思わずタメ口で聞き返してしまった。それくらいセンパイの今の発言には驚いた。
イマドキの高校生でクレープを食べた事がない、と。どれだけのお坊ちゃんなのか、どれだけの貧乏人なのか分からないぞ、これは。
「親が厳しい方で。甘いものはカロリーが高い、と制限されていたんです」
「食べたくはなかったんですか?」
「僕も甘いものは少々苦手でしたので、特には」
初めて知ったセンパイの事。
甘いものが苦手だったなんて知らなかった。センパイはいつもお昼休みに会いに行くとモグモグとサラダやら主食やらデザートやらを食べているから平気かと思っていた。
あ…、でも今思えば(半ば無理やり)食べさせてもらったゼリーとかマフィンとか、甘さ控えめだった気がする…。
「そうでしたか! それでは今日! 私が! センパイのハジメテを頂くんですね!」
「おやおや。違う意味を含んでいる気がするのですが?」
センパイは眉をひそめながら、でもニコニコと笑ってそう言う。
「そうですかね? センパイ、意外といやらしいんですね」
「交際を初めてたったの数日で恋人の下着を見せてください、とお願いした人に言われたくないですね。挙句の果てには堂々とセッk」
「わーわー!! センパイがそんなはしたない言葉、言わないでください!!」
自主規制なあの言葉を言いかけたセンパイの口を私はその場で立ち止まり、慌てて両手で塞ぐ。するとセンパイは少し不満そうに私の手に自身の手を重ねた。
ダメダメ。センパイは可愛らしい言葉を使ってもらわないと。私の妄想と合わない。
…私は至って真面目だ。至って真面目に健全な女子高校生をしている。
「結城さんは言ったのに、ですか?」
「私も言いかけましたからノーカンです! それにセンパイはそんな言葉、知らなくていいんです!」
「結城さん、僕も健全な男子高校生ですよ。他にも性交を表す言葉は知っていますよ」
「例えば?」
「“仲良し”」
「意外と女子だった」
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