第25話 信長は味方さえも敵にした

 構成にかかわる指摘をひとつ出しています。

 この物語は誰が主人公なのか。誰を書くべきなのか。

 そこを少し考えてみていただきたいと思います。



そこに近ずくにつれ、周囲すべてが敵にまわった。

⇒「近づく」ですね。


 どんなに誓いをかわし、どんなに信じたくても裏切る。

⇒ここは「裏切られる。」ですね。


 なぜなら、彼は裏切らなかったからだ。ある意味、実直な男だった。義父であった斎藤道三が攻められたときにも、必死に助けに向かった。

 史実を検証してみても、味方になった相手を裏切った例がない。

⇒ここは文章の展開だけを読むと、「彼」イコール「浅井長政」に読めます。

 しかしここから先の文を読むと「織田信長」のことを話しています。

 いったいここの「彼」はどちらを指しているのでしょうか。


その目で目前のことからスピード重視して片付けていく。

⇒「目」の字が重複していますね。ここは「その目で手近なことから」とすればあまり意図を変えずに表現できます。


 ほら、忙しいときに、膨大な仕事量で心が折れそうなとき、先を考えずに、まず目前の課題からひとつずつ片付けていくでしょ。

⇒「〜ときに、〜とき、〜に」だとちょっと意味がとりづらいので、工夫したくなりますね。ここは「忙しいときに」イコール「膨大な仕事量で心が折れそうなとき」なのか、「忙しいときに」または「膨大な仕事量で心が折れそうなとき」なのか、「忙しいときに」中でも「膨大な仕事量で心が折れそうなとき」なのか。どれが正解なのかが見えてきません。


 これをビジネスに例えると、企業がシェアを拡大して業界ナンバー1の地位に手が届きそうなとき、同業者からの反発が大きくなる。この時、企業経営者はまず最大のライバルから倒すのか。

⇒ここですが、企業経営者としてはナンバー1ならナンバー2に迫られないよう、三番手以下をすべて味方に引き入れようと試みます。もしナンバー2以下が結束するとナンバー1を上回る状況ならとくにです。

 私はいちおう書店の店長をしていたし、生涯兵法を勉強しているので、このようなときに経営者がどうするかは心得ているつもりです。

 当時の建前としては将軍足利義昭がナンバー1で、信長がナンバー2、ほかはその下といったところで、信長としては足利義昭が三番手以下と結束されると太刀打ちできなかった。だから結束される前に各個撃破しようと考えたはずです。もし信長に兵法の知識があれば、ですが。信長が『孫子』に通じていたかは知りませんが、もし知っていたら確実に各個撃破を実行します。まず最も組みしやすい敵を叩き、手強い敵とはなるべく戦わないようにしたはずです。


 槇島城を圧倒的な勢力で支配下においた数日後、私たちは古巣の坂本城にもどっていた。

⇒「圧倒的な兵力」かなと思います。

 またここで「私たちは」が出てくるまでアメの様子が出てこないので、この話も物語に必要かと「小説賞・新人賞」の選考さんに問われたら窮すると思います。

 構成の問題ですが、この話は「第22話の直後」に持ってきたほうがよかったかもしれません。



 この物語の主人公はアメのはずで、第1章の終わりで信長について語るのでは主人公の立ち位置が変わってしまいます。あくまでもアメを主人公にするなら、第1章の終わりは第24話にするべきです。そうすればアメが主人公で終わりますからね。もしくはタイトルに引っかけて明智光秀について書くか。

 このあたりの構成はしっかりと考えてみてください。

 「小説賞・新人賞」の選考さんにツッコまれても「この構成が正しいんです」と胸を張れるくらい。


 今16:32なのであと1話は添削できるかな。

 時間ももったいないのですぐ次に取りかかりますね。





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