第5話

「今、思ったんだけど」

僕Aが僕の顔を見ずに、腕組みして

つぶやいた。

「なに」

「意味あるのかな」

「なにが」

「僕ときみの同一性についてだよ」

僕Aがそう説明した。

「難しいこというね」

僕が突っ込んだ。

「意味わかって言ってる?」

「もちろん。たとえばどちらかが整形して

片方に似せたとしよう」

「まあ、ありえるか」

「だけど、恐らくは相当な大金を払って

キミに似せたって、それで凄い報酬が

得られるワケじゃないし、有名になれる

ワケじゃない。要するに何の見返りもない

じゃないかっていうことなんだよ」

僕Aが膝の上で指を組んだ。


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