第15話 不潔って叫んで走っていったのよ
「どういう関係って、幼馴染ですけど?」
「それは既に調査済……いえ、知っております。そうではなく、どれくらいに親しい間柄にあるのですか? 北畠さんは目の下にクマが見えますし、楠木くんも動きの精彩を欠いていますから、どうされたのかと思いまして」
探りを入れるような鋭い視線で見つめてくる足利さん。
教室で男子に向けて、愛想よく振りまいている時とは大違いね。
男子だけじゃなくて、女子から反感を得ないように動いているところが只者ではない感じがする。
ここで下手なことを言ったら、危ない気がするけど別に変なことはしてないし、問題ないよね。
「昨日の夜はちょっと夜更かしをしちゃったの。彼が(新人メンバーの研修を)してくれるって言うから、やってたんだけどもうすごい激しくって。それで終わってもすぐに(ログアウトを)してくれなかったせいで気付いたら、真夜中だったの」
「あ、あ、あなたたち、そこまで深い関係だったの!? 不潔よっ」
足利さんは頭から湯気が出そうなくらい顔を真っ赤にして、すごい速さで校舎に戻っていった。
速い。
陸上部でレギュラーに入れるんじゃないの。
「ん? 何の話なの? 恥ずかしがる要素ないよね。しかも不潔って、ちゃんとお風呂入ってるわ。朝もシャンプーしてきたし、失礼ね」
あたしは慌てふためきながら、見た目の割に俊足だった足利さんの様子を不思議に思いつつ再び、タケルウォッチングを楽しむことにした。
ストーカー? 失礼なっ。
あたしは純粋にタケルを観察しているだけであって、ストーキングではないんだから。
そもそも、ストーカーが用意したお弁当を食べてくれる?
『あーん』して、食べさせてるあたしがストーカーだったら、世の中のほとんどの女の子がストーカーじゃない?
よって、あたしはストーカーじゃ、ありませんっ!
👧 👧 👧
授業はいつも通り。
あたしもタケルも真面目に勉強はするタイプだからね。
足利さんも朝は変な様子だったけど授業は真面目に受けているみたいだから、朝のテンションがおかしいだけの子なのかもしれない。
うん、きっとそう。
低血圧かもしれないわ。
不機嫌になりやすいもんね。
そうして、いつものように昼休みはあたし、タケルとカオルの三人でランチタイムなんだけど、今日はスミカもいる。
彼女の分のお弁当は作ってないから、『おかずあげようか』と言ったら、『あるから、平気だよ』とスミカが微妙にドヤ顔をしてる。
用意周到に洋風なメンチカツにオムレツ風卵焼きなどが入ったお弁当を持ってきているし。
『やるな、スミカ』って、ライバル意識を燃やしてる場合じゃない。
「それでね、不潔って叫んで走っていったのよ、何なのかしら」
「あっ、うーん、やっぱりアリスって、ねえ?」
「そうだね、うん」
スミカとカオルが顔を見合わせて、頷き合ってるけど何?
あたし、何か、変なこと言ったかな。
「何だろうね、不潔って。アリスはお風呂好きなのにね」
「あっ、こっちもじゃない?」
「そうなんだよね」
タケルの発言にもスミカとカオルは顔を見合わせて、うんうん言ってる。
あたしだけじゃなく、タケルもどっか変なのかな。
教えてくれればいいのに、教えてくれそうもないんだよね、この二人。
「まぁ、アリスちゃんとタケルくんはその辺が尊いのよ」
「尊い……うける」
やっぱり文芸部の二人の言ってることはよく分かんないのよっ。
専門用語はやめて欲しいわ。
そんなやや、騒がしくって、楽しい昼休みはいつものように過ぎていく。
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