第15話 ログインしただけなのにレベルアップ ◆オンライン◆
「ん? どうしたの??」
ステータス画面を見ながら呆然としている俺にユーノが尋ねてきた。
「いや……ログインしただけなのにレベルアップしてるんだ……」
「わぁ、それは得したね!」
「そういうもんでもないだろ。なんかこう……理由が分からないとモヤモヤするじゃん?」
「うーん、理由ねえ……」
ユーノは顎に人差し指を当てて考える。
「前回の狩りでレベルアップしたのに気付かなかったとか?」
「それは無いな。ちゃんとステータスを確認してからログアウトしたし、レベルアップの際はファンファーレが鳴るから普通気付くし」
「じゃあログアウトしたあとに何かあったとしか思えないね」
「何かって何?」
「ユウトが家にいない間に、家族の誰かがこっそりプレイしてレベ上げしてたとか」
「それも無いな。パスワードかけてあるから俺以外プレイできないし」
「それじゃあ……ユウトに夢遊病の気があって、寝ている間にプレイしてた。これが一番有力!」
「なんでそれが一番可能性高いんだよ!? それに、もしそうだったとしても器用すぎだろ。そこまでの事が出来るなら、もう起きてるよ!」
「うーん……それも違うとなると……なんだろう?」
ユーノは本気で悩み始めていた。
俺も今一度、考えてみる。
ソフトのバグでないのなら、ユーノが言った通り、レベルアップの要因はログアウトしたあとから次のログインまでの間にあるはずだ。
そこで考えられるのは……。
俺の脳裏に昼間の球技大会での出来事が思い起こされる。
もしかして……ステータスがリアルと同期っていうのは……まさか、そういう事でもあるのか?
俺はサッカーの試合に於いて一人で25点を上げ、チームを勝利に導いた。
その勝利にも経験値が入るとしたら……?
……有り得るな。
思い起こせば、不良を撃退した時もそうだった。
あの後、すぐにゲーム内で狩りをしたが、イビルバットを一匹倒しただけでレベルがアップした。
それは丁度、不良を撃退してレベルアップ寸前まで経験値が貯まっていたからじゃないだろうか?
それ以降はゲーム内で普通に経験値が累積されていくだけだったから、可能性としては高い。
もしそうなら、とんでもない事だぞ。
リアルで経験値を貯め、ゲームで魔法やスキルを手に入れる。
その力を使って、再びリアルで経験値を稼ぐ。
もちろんゲーム内だけでも経験値を貯めてレベルアップが出来る。
無限に強くなって行くイメージしか沸かないぞ。
ただ経験値を得る為の勝利条件が曖昧だな。
モンスターなら倒すことで条件を達成するけど、リアルでは必ずしも人を倒す必要はなさそうだ。
サッカーはチームでの勝利だし、不良は撃退しただけでゲームみたいに殺してしまった訳じゃない。
その辺の条件も含めて、本当にリアルでも経験値が入るのか実際に検証する必要がありそうだ。
「原因が分かった気がする」
「えっ、何?」
「まだ憶測に過ぎないんだが……」
そこで俺は、今考えていた事をユーノに話した。
「それが本当だったら凄いね! ノインヴェルトの上位ランカーに入れそう!」
「そっちの期待か!」
彼女の価値観はゲームが中心らしい。
確かにノインヴェルトでも強くなれそうだけど、リアルでは常識外れの強さになれそうだ。
「そういう訳だから、本当にリアルの経験値が入るのかどうか検証してみようと思うんだ。それに協力してもらえないかな?」
「うん、いいよ。でも、どうやって検証するの?」
「まずは明日の球技大会二日目だな。それを今日みたいに俺の活躍で勝利したらどうなるか? それが一番分かり易いと思う」
「なるほど。でも、それだと私の出番無いよ?」
「他にもどういった事で経験値が入るか確かめる必要があるから、ユーノにはそっちをお願いしたいんだ」
「ふむふむ」
「例えば、今俺が使える魔法やスキルでリアルに活用出来そうなアイデア出しを頼みたい」
「おー、そういうことね」
そこで俺は使用出来る魔法とスキルの内容を彼女の伝えた。
「魔法はリアルで使うとヤバそうな感じがするから今回は置いといて、スキルを中心に見て行こう」
彼女は前からある鈍化と駿足、そしてファストスペルは知ってるから、今回新しく増えた不可視と隠密の詳細を伝える。
[不可視]
一定時間、姿を透明化し、敵に発見されなくなる。
但し、音感知能力が高い敵には無効。
読んで字の如く、そのまんまの能力だな。
ゲームでは戦いたくないモンスターが進路上にいた場合、これを使えば回避出来そうだ。
これをリアルで使うとするなら、どんな方法があるだろうか?
「やっぱり覗きかな?」
「ぶふっ!?」
彼女の口から思いも寄らない言葉が出たので噎せてしまった。
「覗きって……それはヤバいだろ! しかもそれ、経験値入らなそうじゃん」
「そう? こんな感じにならない?」
『ユウトはユーノの着替えを覗いた。歓喜した。一万ポイントの経験値を得た!』
「ほら」
「ほら、じゃねえよ! おかしいだろ」
しかも、なんで自分の着替えを覗かせた!?
「そうかなー……良いアイデアだと思うんだけど」
「……」
確かに――、
覗いた ↓ 見えた ↓ 勝利!
とも言えなくもないけど……それはやっちゃいけないと俺の良心が叫んでいる。
「じゃあ不可視は置いといて、こっちはどうだろ」
[隠密]
一定時間、気配を消して行動することが出来る。
音感知能力が高い敵に有効。不可視と併用可。
これは特定のモンスター以外には、あんまり出番は無さそうなスキルだな。
ゲームではそうだけど、リアルでは忍者みたいに行動出来そうだ。
「うん、これもやっぱり覗きだね」
「うおい!? いい加減、そこから離れろよ」
「えー、だって不可視と併用出来るなら、完全犯罪も可能でしょ?」
「今、犯罪って言った!?」
段々、ユーノ……というか名雪さんのイメージがおかしな事になり始めている気がするぞ……。
結局、その後も使えそうなアイデアは、彼女の口からは出てこなかった。
仕方が無いので、そのまま二人で夜半過ぎまでモンスター狩りをして楽しんだ。
もっと遊んでいたかったけど、明日も球技大会があるので、さすがにそれ以上は……というので名残惜しいけどお開きに。
そして、もうログアウトする、という時に現在の累積経験値を確認しておくことにした。
[Exp 1100]
これが明日の球技大会を終えた後、変化するのか、しないのか?
それを確かめようと思う。
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