でえとって何ですか?

 ある日のこと。

 義母と、彼としてきたデートについての話になりました。

「どんな所ば行ってたと?」

「ええと。私が前々から行きたいって言ってた水族館に初めてのデートでは行きました。それからは月に一度、お義爺ちゃん、お義婆ちゃんの所に連れていかれてました」

「花香さん……それは、普通のデートじゃなかよ。ひどかね」


 義母の言う通りです。笑 私は彼が初彼だったのに、普通のデートをしたことがほとんどありません。毎月県外の義祖父母四人に会いに、往復四時間のドライブがほとんどでした。まず最初に連れて行かれた時はお墓参りをしました。慣れないショートブーツを履いて坂を登る。そのころの彼は気遣いが下手で振り返りもしません。段々離れていく距離が悲しかったのを覚えています。

 義祖父母の家では彼は寝てしまうんです。その間、私はよく知らない義祖父母とお話をすることに。入院している義祖母にはご飯を食べさせて、逆に「花香さんも食べんね」なんて言ってもらうことも。今思えば変なデートです。

 他はほとんどおうちデートでした。彼の好きな映画を見るか、彼がパソコンを触ってるのを何時間も待つ。私は暇なので料理するか、自分も読書。正直、彼が私以前の付き合っていた方と長続きしなかったのがよく分かります。彼は彼女に構わないから。プレゼントくれるわけでもなく、どこかに連れて行くわけでもなく。変な話、男性の親友や先輩とご飯を食べに行く回数の方が多かった。彼は人混みが嫌いなのです。

 彼は付き合い始めから結婚を考えていたと言ってました。私と出会った時、頭の中で鐘が鳴ったそうです。それは嘘かほんとかわかりませんが、それで祖父母のうちばかり連れて行ってたのですね。彼の実家も何度か行きましたが、祖父母の家の方が圧倒的に多かったです。でも私は彼が初めての彼氏。連れて行かれるのが義祖父母の家とパソコンパーツ屋さんばかりで不満はありました。よく別れなかったと自分でも思います。笑

 ただ、今考えれば、義祖父母に何度も会っていたのは良かったと思います。変な話、自分の祖父母より会っていました。時間を共にするというのは凄いことです。なぜなら、家族になっていくのですから。入院していた義祖母には一番影響を受けました。義祖母は私の体をよく揉んでくれました。

「あらあ、花香さん。これじゃ一度寝込んだら起きれんよ」

 私の脇のリンパを揉んだ時に言ってたお義婆ちゃん。ある意味当たってしまいました。

 そしてその義祖母は熱心なカトリック信者でした。ある日ちょうど義祖母が寝ている時に来てしまった私たち。その時でした。お祈りの時間を告げる鐘が。義祖母は寝ているのに十字を切り、お祈りをしました。無意識だったのだと思います。私がカトリック信者に改宗したのはこの義祖母のこの時の姿が印象的だったからかもしれません。(一番は主人と同じカトリック墓地に入りたかったからですが)。義祖母は結婚前に亡くなってしまい、仕事で葬儀に出られなかったことだけが悔やまれます。

 今も二人で家で別々のことをして過ごすことが多い私と彼。ある意味付き合い始めからあまり変わっていません。あの頃と違うのは、私の気持ち。今は二人でいられるだけで幸せ。二人で薔薇を見に行きたいなど、小さな望みはありますが、叶わなくても不満はありません。彼は仕事で疲れてる。だから家ではゆっくりして欲しい。それが一番の願いだから。

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