パソコンのモニター
彼の愛するパソコン。そのモニターが早くも壊れてしまった。ボタンを押していないのになぜか左下画面に操作の画像がチラチラとでるようになったのだ。彼は目が疲れる模様。
「新しいの買ったら?」
「うん」
彼はiPad miniでモニターを探し始めた。
「花香! 世の中にはすごい奴がいるぞ!」
そう言って、私にiPad miniを見せてきた彼。私はその画像を見てげんなりした。そして、嫌な予感を覚えた。
果たして。
「モニター買ったの?」
という私の言葉に、
「うん……」
と彼らしくない返事。
「ちなみにいくら?」
私の質問に返ってきた彼の言葉に、私は思わず、
「ええ?!」
と彼を振り返ってしまった。普通のモニターの何倍もする値段だった。
彼の唯一と言っていい息抜きがパソコンのゲームだ。だから私はそれは優先させたい。けれど。
「なんで、政府から給付金もらって、その足しにしなかったの……?」
思わず呆れた声を出してしまった。彼が政府の給付金を「金は自分で稼ぐものだ。政府の手は煩わせない」と断ったのが何ヶ月前だったか。
彼は流石に苦笑い。私は仕方ないなあとため息。
その数日後。
届いた箱に私は言葉を失った。小さな冷蔵庫並みの大きさだったからだ。
「……」
いそいそと開け始めた彼。
モニターなので、発泡スチロールで梱包されているからというのはある。それにしても。
「なんか凄いね」
私は驚きを通り越した感じで言った。
「花香、ちょっと手伝って!」
あまりに大きいので一人でつけられなかったようだ。私は主人に言われた通り、モニターを持ち上げているのを手伝った。重い。
縦はそこまでは大きくない。問題は横だ。1メーター以上は普通にある。そして、モニターが左右カーブして、椅子を囲むような感じなのだ。
「あなたも凄い奴の一人ね」
「ははは」
凄いエネルギーだ。私はこんなにエネルギーを注げるものがあるだろうか?
ある意味羨ましく思った。
新しいモニターの形に画像をセッティングするのには時間がかかったようだが、今は楽しそうにそのモニターでゲームをしている。それを見ると、まあ、いっかと思うのだった。良かったね。不思議なモニター買えて。
2020.11.9
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