変な夫婦
誕生日が過ぎて行った。
毎年彼はこの日だけ手紙をくれる。彼は口下手だけど、手紙はなかなかユーモアに富んでいて、そして、普段言わないことを書いてくれる。
その日、彼が車で帰宅途中に電話をしてきたので、私は、
「手紙、書いてくれた?」
と尋ねた。
「書いたよ。殺!って」
「なんで殺? 私を殺したいの?」
「いいや。じゃあ、狂」
「え? 凶って、縁起悪いじゃん」
「そっちの凶じゃなくて」
「どっちみち悪い意味じゃん。しかも漢字一文字の手紙って何?」
「じゃあ、二文字にしよう」
「「発狂」」
「なんで花香分かったん?」
「なんとなく」
と二人にしか分からないくだらない会話をした。
彼は帰宅後、何故かお年玉袋に手紙を入れて渡してくれた。
今年の手紙は彼の忙しさを語るように短かった。けれど、とても嬉しいことが書いてあって、読んでにんまりした。
毎年、私の誕生日は友人達や両親からのメール、そして彼からの手紙で祝福される。今年はケーキはケーキ屋さんで買わなかったし、ご馳走でもなかった。彼からのプレゼントは毎年ない。でも、私にとってはこの一年に一度の手紙が何よりのプレゼントなのだ。
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