琉球 ニライカナイ編
第101話 養ってちょうだいな
「
「わかった。やってみる」
琉美もマブイグミを試してみるが、全く手ごたえがないようだった。
「花香ねーねーがやっていた、最高峰のマブイグミってのをやらないとダメってことか?」
俺はナビーに質問したが、
「この感じだと、グミヌチヂでも難しいかもしれないねー。とりあえず、首里城に連れて行って
「カマドおばーはグミヌチヂできないんですか?」
「残念だが、あれはノロが
カマドおばーほどの人ができないとなると、花香ねーねーはすごかったのかもしれない。
その時、ケンボーと浦チンがシーサーに乗ってやってきた。なぜか少し焦っている。
「シバーーー!
ナビーは何も言わずにケンボーを
「
カマドおばーはケンボーに呆れながら、ナビーに催促した。
「あの
駆けつけてくれたケンボーを無視していくのは気が引けるが、カマドおばーの言う通りに急ぐことにする。
剛を白虎に乗せてナビーと琉美がまたがったが、俺はやりたいことがあるので乗らずに言った。
「ごめん、俺は後から追いつくから、先に向かってちょうだい。ちょっと行きたいところがあるから」
その時、突拍子もなく背後から誰かに抱き着かれ、首の付け根付近に頬を付けながら話しかけられた。
「あなた、すごく強いね! 今の戦いずっと見ていたけど、とっても感動したよ!」
「え!? ちょっと、まっ、ど、どちらさんですか?」
抱き着くのをやめたので振り返ってみると、琉球の者でも
「やったよ! 言葉通じるなんて幸運ね! あっ、申し遅れました、
距離を詰められ上目遣いで言われると、はいと答えそうになったが、ナビーと琉美が鋭い視線で睨んでいる気がして、思いとどまった。
「急にそんなこと言われても困ります。急いでいるので他を当たって下さい」
「そんなぁ……」
俺が断ったのを確認したナビーは、白虎を首里の方角に向けさせた。
「シバ、先に行っているから用が済んだら来なさいね。あと、自分がこの世界の人間じゃないってことを考えなさいよ」
この
「わかってるって」
今度は琉美がくぎを刺してきた。
「その伸びている鼻の下を縮めてから言ってよね」
「伸びてねーし! そんなことより、早く剛さんを」
白虎はあっという間に首里城に駆けて行った。
ナビーと琉美がいなくなると、
「すでに2人も養っていたんだね。
俺が困って言葉に詰まっていると、
「
「良い物がいつもより多かったせいで、少しでも多くの物を船に乗せるためにと、高給取りで操船に関係ない
再開された大和との交易が順調で、今まで
そのため、今まで手に入らなかった大和の品を少しでも多く持ち帰るために、
「そうか。悪事をして首になったわけではないのだな? それなら、シバ。年も近いようだし、少しの間だけでも面倒を見てあげてくれないか?
「
「やったよー! 改めまして、
「よろしくね。でも、1つ条件を出していいかな?」
「もちろんですよ」
「じゃあ、できるだけ語尾にアルをつけてください」
「アル? まあ、そんなことでしたら。わかったアル」
……やっぱり、アルがしっくりくるんだよな。
そんなことより、負傷した
「カマドおばーとチヨには申し訳ないけど、今の戦いで出た
「中二
浦チンは突然、眉間にしわを寄せながら強い口調で俺の言葉を遮った。浦チンのこんな姿は、これまで見たことがなかったので少し驚いたが、怒り慣れていないためか、ぎこちなく見える。
たぶん、何か意図があっての事だろうと思う。
すると、俺が返答する前に、軍のまとめ役である
「浦添
今にも殴り掛かりそうな阿波根の肩を、護佐丸がガシッと掴んで制止させた。
「落ち着いてよく見なさい。浦添
浦チンの顔をよく見ると、険しい表情のまま唇を噛んで血がにじんでいた。
「
『浦添に按司はいらない! 浦添にはもう
ひどい言われようだったが、涙を流しながらクシャクシャな顔で言われると、心がキュッと締め付けられた。
俺は何も言わずに皆の想いを汲み取って、
……浦添按司になって本当によかったな。
俺と萌萌は、
「下地さん、その節はどうもありがとうございました」
「
「実は下地さんの腕を見込んで、作って欲しいものがあるんですけど、最近は忙しいですかね?」
下地さんは後ろに立っていた
「ナビーさんや琉美さんという人がいながら、シバさんも隅に置けないですな。もしかして、そのお嬢さんの
「どっちも違います! こちらは
「帰還までの期間、面倒を見るってことですね。ぶっふっふ!」
「そうじゃなくて、作ってほしいものは
「残念だが、
「実は、刀の時みたいに小さい
ナビーたちを先に行かせてまで俺がやりたかったこととは、ナビーがいつでもヒヤーで戦えるように、ヒヤーのキーホルダーを作ってもらうことだった。
今回の戦いは、ナビーが最初からヒヤーを持っているだけで、もっと楽に戦えたと思うので、少しでも早く頼んでおきたかったのだ。
「シバさんには儲けさせてもらいましたからね……
すると、黙って聞いていた
「そういうことなら、萌萌が役に立つと思うアルよ。祖国では戦で何度も
「
「
萌萌をここにあずければ、ヒヤーのキーホルダーも作れて、
……一石二鳥じゃないか!
俺は2人に向かって深々と頭を垂れた。
「
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