四天王の次なる行動


「あーあ……予想通り負けちゃったであります」


 カーミラはうめいた。魔王の力を授かり受けた哀れな元国王は錬金術師エルクの前に屠られた。使い魔であるイビルアイの視覚を経て、その様子は水晶に投影されていた。


「可哀想な奴でありました。まあ、情にほだされて助太刀するような真似はしませんが。クックックック」


 カーミラは不気味な笑みを浮かべる。


「それより、残る魔王様の宝玉の二つのうち、残るひとつが見つかったであります」

「そうか。それはどこにある?」

「竜人の国にあるであります」

「竜人か……2000年前にも存在した種族だな」と、ガウェイン。

「ええ。あいつら2000年前の勇者と魔王様の闘いの中、勇者の側についた亜人種ですから。いうならばエルフと同じで私達からすれば敵側であります。敵側であるからそれを守るために魔王様の宝玉を勇者から授かったのでありましょうよ」

「……それでどうする? 誰が行く?」

 

 ネメシスは聞く。


「竜人には借りがあります。私が行きましょうか。クックック」


 カーミラは笑う。


「私と、私率いるアンデッドであいつ等に一泡吹かせてやりましょうぞ」

「だが、竜人は強力な種族だ。人間のようには侮れないぞ」

「わかっております。その点を理解しております。だから私が行くのでありますよ」

「イビルアイの視覚を通じてみただろう。あの錬金術師のパーティー、そこに加わっている娘のうちの一人も侮れない存在になった。カーミラ、お前一人で大丈夫なのか?」

「……四人で行きますか? 宝玉はひとつではありません。残り一つも探してもらわねばなりませぬ」

「そうだな。だったら私が行くか」


 ゼロティアは言う。


「左様でございますか。では私とゼロティアの二人で竜人の国には参りましょうぞ」

「ふっふっふ。そうだな」

「なんだか楽しそうでありますね? ゼロティア」

「エルフの国は些か手ごたえがなかったからな。あれは戦闘というよりはただの虐殺だ。あの件の錬金術師と闘った時は戦闘と呼べるものであったが。カーミラ、お前はそうではないのか?」

「そうでありますね。私も楽しみでありますよ。宝物庫への襲撃などおままごとにも程がありましたから。久方ぶりの戦であります。眠っていたとはいえ、2000年ぶりの戦でありますから。血沸き肉躍るのも当然と言えましょう」


 カーミラは笑う。凄絶な笑みを浮かべる。


「せいぜい楽しませて頂きましょう。クックックック」

「それでは私達は行く。雷竜に乗って竜人の国を目指すが、カーミラはどうする?」

「気にしないでください。私はその身を蝙蝠に変える事ができます故」

「そうだったな」

「では行ってまいります。残りの魔王様の宝玉、お二人で探しておいてくださいませ」

「わかっている。必ずや魔王様の宝玉を見つけ出そう」

「ああ。わかった」

 

 残る二人は答えた。


「ではいきましょうか」

「うむ。行こうか」


 二人は城を出る。その国は滅んだ国に残った廃城だった。何とも四天王のアジトに相応しい退廃的な場所でもあった。

 雷竜に跨ったダークエルフと、無数の蝙蝠がその城から飛び立っていった。




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