元国王 四天王に見限られる

 王国に戻ったゼロティアを他の四天王は出迎える。


「ご苦労でありましたね。ゼロティア」

「ああ。ありがとう。カーミラ、助かった」

「ええ。あなたの為ではありません。全ては偉大なる魔王様の復活の為であります故」

「そうだな。その通りだ」

「残る宝玉は二つ。大分魔王様のお力が戻ってきたように感じる」


 そうガウェインは述べる。


「ああ。魔王様の復活の時は近い」

「あの哀れな豚が私達を本当の手駒だとまだ思っていて良い気になっているであります。いい加減あの豚も目障りですね」

「消すか?」


 ネメシスは聞く。


「それも面倒であります故。適当な国を制圧して、根城を変えましょう。そこまでしなくても適当な廃墟か何かがあるはず。正式な根城は魔王様が復活してから決めればよいのであります。今はあくまでも借りの根城です」

「……そうだな。その通りだ」

「それでは自分が本当に魔王になったと思っている哀れな豚に最後のご挨拶と行きましょうか」


 四天王は魔王の間に向かった。


「ぐっふっふっふ! よくぞ参った! 我が忠実なる僕! 魔王四天王の四人よ!」

「クックックックック!」

「何がおかしい? カーミラ」

「おかしいに決まっているじゃないですか。魔王様の力を借り受けたというだけで本当の魔王気取りなんですから。これがおかしくなくて、なにがおかしいんでありましょう?」

「全くだ」

「時に真実は残酷で人を傷つける。まあ、相手は醜い豚であるのだから仕方がない」

「な! なんだと! では貴様達はわしに忠義を誓っていたわけではないと申すか!」

「当然ではありませんか! 我々四天王が真に忠義を誓うのは魔王様ただ一人。魔王様の力を借り受けた、醜き豚ではありませんわよ」

「聖剣も譲り受けた。しばらくはこの王国を根城にできた。我々も復活でき、魔王の宝玉も残り二つ。醜き豚にしては上出来だ」

「ああ。貴様にこれ以上忠義を尽くす振りをする必要性はない」

「なんだと! くそっ! くそっ! ふざけるなっ! わしに従え! 従えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 哀れな元国王は叫んだ。


「だから忠義を尽くす義理はないと言っているではないですか。あなたに授けられている魔王の力は仮初とはいえ、一応は魔王様のものであります。最後の悪あがき、せいぜい高みの見物とさせて頂きます」

「それでは自分を魔王だと思っていた哀れな人間よ。さらばだ」

「ああ。さらばだ」

「今まで私達の役にたってくれて実にご苦労であります」

「ではゆくぞ。転移魔法(テレポーテーション)」


 四天王は魔人ネメシスの転移魔法でその場から消えた。


「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! どいつもこいつもわしをとことん馬鹿にしおってえええええええええええええええええええええええええええええええ!」


 元国王は叫んだ。借り受けた魔の力はそれでも強大であった。地鳴りがして、黒い魔力が天高く舞い上がった。


「よい! 仮初のものとはいえ魔王の力は魔王の力じゃ! せいぜい暴れまわって憂さ晴らしをしてやるわ!」


 元国王はこうしてあらゆる国家、存在に対して敵対行動を始めるのであった。自身の身ひとつ。そして魔物となった元国民を従えて。

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