功績を評価されSランクパーティーに昇格する

 冒険者ギルドに入った時、明らかにラブリーラビットを見る目が変わっていた。


「あれが王城の襲撃者を撃退したラブリーラビットか」

「ああ……すげぇ。なんでも撃退したのは魔人だったらしいぜ」

「魔人か……マジか。確か魔王と同じく滅んだ種族だろ」

「何でも蘇ったらしい」


「……随分と慌ただしいですね」


 無理もない、王城が襲撃されたのだ。騒がしくもなる。


「おめでとうございます。ラブリーラピッドの皆様、皆様の活躍のおかげでこの迷宮都市の危機も救われました」

「そうですか。それは何よりです」

「今回の特別クエストのクリア報酬になります。協議の末この金額になりました」


 どさりと袋をカウンターに置かれる。


「開けてもいいですか?」

「どうぞ」

「うわっ! 全部! すごい! これ全部金貨です!」

「金貨100枚になります。そして、クリア報酬として冒険者パーティーのランクをSランクに昇格します」

「え? Sランク、本当ですか?」

「ええ、本当です。おめでとうございます。Sランク冒険者パーティーでも退けられなかった敵を退け、そして王国スターティアの危機を救ったという点が大きく評価されたようです」

「喜んでいいんでしょうか?」

 

 リーネは疑う。


「……なぜですか? あなたなら『やったー! 先生! 私達Sランク冒険者パーティーですよ! わーい!』と言いそうなものではないですか」

「先生! 私の真似をしないでください! だって、先生におんぶにだっこであの魔人も退けただけじゃないですか」

「それもそうだけど、冒険者ギルドの決定を反故する事はできない。私達はSランク冒険者として恥じないように強くなるしかない」

「そうですね」


 イシスの言葉にリーネは頷く。


「Sランクパーティー、ラブリーラビットの誕生か」

「ああ。Sランクパーティー、ラブリラビット!」

「ラブリーラビット! あのラブリーラビットがSランクパーティーか」


 他の冒険者が会話をしていた。


「なんですか……Sランクパーティーになったのにこの間抜けな雰囲気は」


 エルクは脱力した。


「いい加減パーティー名の変更をするべき時が来たんではないですかね」

「ええ!? 変えちゃうんですか!?」

「だって締まらないじゃないですか」

「残念です。でも先生が決めたことならしょうがありません!」

「後で酒場で会議をしましょう」


 そのうちにSランクパーティーである『四聖竜』が冒険者ギルドに入ってきた。


「来たぞ! Sランクパーティー『四聖竜』!」

「なんでも王城の襲撃者を前に逃げ出したらしいぜ、なんて情けない連中なんだ」

「ああ! 聞こえてるぞ! てめぇら! じゃあてめぇらならあの相手に何か出来たっていうのか! お前達は援軍にも来なかったじゃねぇか!」

「よしなさいよ。みっともない。あの子たちも見ているのよ」

「ちっ」


 ゼネガルは舌打ちする。


「Sランクパーティーに昇格おめでとうエルクさん。あなた達なら必ずSランクパーティーに昇格すると思っていましたよ」

「ありがとうございます」

「っとは言っても、想像していたよりもずっと早い昇格でしたけどね」

「あなた達のおかげで私達も助かったのよ。あのままあの魔人を放っておいたら、私達まで殺されていたかもしれない」

「そんな、私達は何もしてません。すべては先生のおかげです」

「そうです……先生のおかげです。私達は別に何も」

「あら。Sランクに昇格したというのに随分と暗いのね」

「……ところでエルクさん。これからどうするんですか? あなた達ならSランクより上の『EX』のパーティーになれるかもしれないです」

「これからですか? エルフの森を通り、北へ向かいます」

「北へ……そこに何があるんですか?」

「この娘達にも強くなってもらわなければなりません。その手掛かりがあるんです」

「そうですか。しばらく会えないかもしれないですね」

「ええ。そうなるかもしれません」

「俺達ももっと強くなります。今度こそあの魔人と会っても倒せるように」

「あなた達の幸運を祈ってますよ」

「ええ。俺達もエルクさん達の、そしてラブリーラビットの幸運を祈っています」


 こうして四人は四聖竜と別れた。次に向かったのは酒場である。

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