王国アンデッドの大軍に襲われる
「な、なに! 失敗したじゃと!」
「は、はい。申し訳ありません」
王国に逃げ帰った呪術師集団の報告を受け、国王は悲痛な声をあげた。
「なぜ失敗したのじゃ?」
「そ、それが」
「なぜじゃ? 貴様達の呪術はとても強力だと聞いていたが。正直に話してみい」
「それが温泉の効用で我々の呪術が効かなかったのだと思います」
「き、貴様! わしを馬鹿にしているのか!」
国王は叫んだ。呪術師はやはり言わなければよかったと後悔した。
「こ、国王陛下!」
その時だった。統括大臣が姿を現す。
「どうしたのじゃ?」
「……国の東からアンデッドの集団が攻め込んできたそうです」
「騎士団を出して迎撃させればよいだろう!」
「ですが、アンデッドには聖属性の武器以外有効な攻撃となりませぬ。聖属性の武器が圧倒的に足りません。騎士団を出撃させれば多大な被害を被るかと思います」
「くっ! 聖属性の武器じゃと! どうやって手に入れるのだ! またエルクの錬金術が必要だったとでも言うのか」
「誠に残念ながらその通りでございます。エルク殿がいれば瞬く間に聖属性の武器を錬成する事も可能でした。全ての騎士の手に渡るくらい、彼なら錬成できた事でしょう」
「く、くそぉ! くそぉ! わ、わしが悪かったと言うのか! わしに見る目がなかったと! エルクをクビにしてからというもの、わしの身には嫌な事ばかりが起こる!」
「国王、いかがされましょうか?」
「う、うるさい! 可能な限り聖属性の武器を装備させて騎士団に迎撃させろ! 多大な死者が出ても仕方なかろう!」
国王は叫んだ。
「は、はい。その通りにいたします」
こうして突如出現したアンデッド達に対して騎士団は多大な犠牲を覚悟して迎撃をする事になった。何とか騎士団はアンデッドを退けたが、聖属性の武器及び聖水(アンデッドに対してダメージを与えられる水)もエルクがいない事により不足し、多大な死者及び負傷者が出たそうだ。
そしてここは多大な負傷者を看病する病院である。病院では置き場が足りずに教会まで利用して、何とか騎士達の看護をしていた。多くの騎士達が傷つき、床に伏せていた。死体の埋葬にも手間取り、四苦八苦していた。
「うっ、ううっ。水、水をくれ」
「ポーションだ。こっちにポーションをくれ」
「なんだ、このポーションは。ぜんぜんきかねぇ。傷が治らねぇよ。エルク様の作ったポーションじゃねぇと」
騎士達が呻き、不平不満を述べている。
「なぁ、知ってるか。エルク様の事」
「なんだ?」
「エルク様は休暇中って話だけど、エルク様の錬金術の価値を知らない国王がクビにしちまったって噂だぜ」
「そ、そんな。って事はエルク様はもう」
「ああ。この王国アーガスには戻ってこないつもりらしい」
「なんだってんだ。エルク様のアイテムがあったからこの国は栄えていたようなもんだろう。それなのにあの馬鹿国王はその恩恵も知らずに」
「この国は限界かもな」
「ああ……そうだな。そろそろ考えた方が良いだろうな」
その後、王国での事。国王は統括大臣から報告を受けていた。
「な、なんじゃと! 騎士団を辞めたい者が多数いるだと!」
「は、はい。そのようです。騎士団を辞めて、この王国を出て行きたいという騎士が多数現れました」
「な、なぜじゃ」
「それは簡単です。誰だってあんな危険な戦闘をさせられれば辞めたくもなります。やはり命あっての物種ですから」
「く、くそっ! エルクがいなくなったから、エルクがいなくなったから、エルクさえ戻ればいいのだな」
国王の目は血走っていた。もはや手段を選んでいる余裕さえなさそうであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます